さて、それでは主要なASP企業の概要を見てみることにするが、その前に全体の企業の動向をつかむ上で、インターネット・リサーチ・グループが調査した99年12月中旬の時点でのASPの市場シェアを参照してみよう。この調査はASPの中でも同グループの分類に言う、Full
Service Providers (FSPs)とService Aggregators (SAs)という、フルサービスを提供するASPを対象として、それらが持つ顧客数を基にシェアを割り出している。グラフに見るように、USinternetworkingが全体の34%の顧客を占めているとなっているが、この調査では顧客数そのものが示されていないが、USi社の資料では顧客数が約100社程度となっているので、全体としてもが顧客数は高だか300社程度と推定される。
Market Share By Customer

さて、これらの主要なASPなどの最近の状況について見てみよう。
1. 純粋なASP
@ USinternetworking(www.usinternetworking.com)
メリーメリーランド州アナポリスに本拠を置く、1998年1月設立のASP。CEOのChristopher McCleary氏はウェブホスティングのパイオニアであるDIGEXの前CEO。IMAP(Internet
Managed Application Provider)と名付けたソリューションでPeoplesoft社やLawson社のERP(Enterprise
Resource Planning)、Siebel社のCRM(Customer Relationship Management)、Broadvision社やMicrosoftのEコマースなど幅広いアプリケーションを提供しており、ワンストップサービスを売り物にしている。データ・センターも従って、北米に2箇所とアムステルダムと東京に自前で持っている。この2月にサービスをネットワーク上で提供するための独自のプラットフォーム、USiGSP(USi
Global Services Platform)のVersion 2を発表したが、これらのネットワークのインフラにより、サービス・レベルで99.99%まで保証できるとしている。
USiの資料の中に、従来の自前のITインプリメンテーションとASP利用の価格比較が載っており、興味深いのでここに掲げておく。
USi’s Value Proposition
Traditional Implementation
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IMAP Service
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License |
$180,000
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Included
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Hardware |
50,000
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Included
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Implementation |
480,000
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Included
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Total Investment
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$710,000
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None
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Maintenance |
$3,000
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Included
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Disaster Recovery |
4,000
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Included
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Bandwidth |
2,000
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Included
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Operations |
17,000
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Included
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Total Monthly |
$26,000
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$36,000
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Time To Benefit |
6 months - 2 years
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1 - 3 months
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なお、同社が市場価値で5億ドル程度の企業をターゲットにしているというので、何 故かと質問をしてみたところ、それ以下の小企業ではASPといえどもコストが高すぎ、大企業はカスタマイゼーションのニーズが多くて費用対効果が悪いからと言うことだった。
同社の99年の売上高は3,550万ドルであったが、1億330万ドルの損失を計上している。99年後半に急激に陣容も拡大し、1,000名(うち700名が技術者)規模になったので、やむを得ないことと思われるが、2000年は売上高も3〜4倍にできる見通しであり、あと2年ぐらいでは黒字化ができると見ているようである。
A Corio(www.corio.com)
Jonathann Lee氏(Chief Strategy Officer)が98年9月にシリコンバレーで起業したASPで、2ヶ月後には、最初の顧客としてExciteを獲得している。米国内に11箇所の支社を持っている。ネットワークとデータセンターの部分は、Concentric
Network とExodus Communicationsに運営を任せているので、サービス企業から参入したASPのような形態となっているが、最初からASP企業として生まれているので、純粋ASPと分類しても良いと思われる。
同社のCIE(Corio Intelligent Enterprise)と名付けられたスイートは、PeoplesoftとSiebelのエンタープライズ・アプリケーションを中心に提供するものである。最近ではCommerce
OneのEコマース・アプリケーションなどの提供も始めている。未上場のため、同社の売上等は明らかになっていないが、シリコンバレーのベンチャーキャピタルのほか、PeoplesoftやSiebelを初め、この1月にはMicrosoftも1千万ドルを投資するなど、多くの投資家の注目を集めている。
B FutureLink(www.futurelink.net)
1996年にカナダで設立され、現在はカリフォルニア州アーバインに本社を持つ、NASDAQ上場(98年1月)の企業。自らを“The Computer
Utility Company”と呼び、顧客が望むどのようなアプリケーションも、まるでユーティリティー企業のように定額で提供するとしている。ASP(同社はApplication
Hosting Servicesと呼んでいる)に加え、Application Hosting Platformsと呼ぶ、Citrix社のサーバー・ソフトウェアを用い、顧客企業が自社のリソースで自社内にあたかもASPを置いたかのようにするコンサルティング・サービスを行っている。サービス系の他のASPも同じようなサービスを提供しているが、これなどは、大企業が自社内で今後実施することが増えそうなソリューションだと思われる。
その他にも、コンサルティングやサポート、教育などを行っているが、全体としての規模は小さく、99年第3四半期(6-9月)の売上で160万ドル(ASPだけでは11顧客で10万ドル)で、760万ドルの損失を計上している。
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