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2000年6月 電子協 ニューヨーク駐在・・・長谷川英一
米国における電子政府構築の動向 |
4. 最近のトピックス PCワールド(http://www.pcworld.com)の6月号は、この3月にアリゾナ州で行われた民主党の大統領候補予備選において、初めてオンライン投票が行われたことを、歴史が作られたと表現している。電子政府にからむ次の大きなステップは明らかにオンライン投票であろう。アリゾナの選挙を請け負ったElection.com(http://www.election.com)によれば、有権者投票数の8.6万票のうち、3.6万票がオンラインで投票されたという。これに対して、カリフォルニア州で今年の初めに出されたビル・ジョーンズ副知事が主宰するタスクフォースの報告は、交通違反切符の支払い、公立校への児童の入学手続き、運転免許証の更新、建築許可申請などはオンラインに移行できるが、オンライン投票の早期実施については保留としている。カリフォルニアのリバーサイド郡とモンテレー郡では3月の予備選でショッピングモールなどに設置した100のタッチスクリーン・ターミナルでのオンライン投票を実施し、11月の本選でもそれを拡大すると発表しているが、ジョーンズ報告では、まだe-votingには多くのセキュリティー上の問題があると指摘している。投票者の本人確認や、投票の守秘性、ハッカーによるシステム攻撃からの回避など、現在のEコマース抱えているのと同様の問題があり、スマート・カードや他の安全な本人確認手段などがそれらの解決に必要であろうとされる。(因みに、アリゾナでは、事前に有権者に7桁のPINを郵送し、オンライン投票にはそのPINと有権者登録票に記載された出生地などを記入させることで本人確認を行っている。)同タスクフォースはアリゾナの試みは興味深い実験ではあったが、カリフォルニアではより多くの法的な要求があり、またアリゾナではハッキングの報告はなかったが、よりメジャーな選挙にはその恐れが高いことなどから、e-votingをすぐに実施に移すことはできないと指摘している。 なお、PCワールドの読者1,400人が答えた、オンラインに移行して欲しい仕事のトップ5は、運転免許証の更新、自動車の登録、投票、有権者登録、出生証明書などの重要記録のコピーの注文、となっている。 さらに、同記事は各州はもっと先を行っているとしている。例えばメリーランド州ではネット上で、州税の納付、新事業の登録、ビジネス・パートナーの納税登録番号の確認、不動産所有者のチェック、自動車登録などが、インディアナ州では、不動産所有者のチェック、有権者登録、納税、自動車登録の更新、医師免許のチェックなどができる。アラスカ、アーカンサス、カリフォルニア、ニューヨーク、ペンシルバニア、ウィスコンシンの各州では自動車登録がウェブ上でできる。バージニア州では運転免許証の更新がネット上ででき、ペンシルバニア州では州内の30箇所のタッチスクリーン・ターミナルからそれができる。ネブラスカ州では猟や釣りの許可証の購入や重要な統計の注文がオンラインででき、近く免許証やプロフェッショナルの認定証の更新ができるようになる。 政治との関係で蛇足を付け加えれば、今年の前半の共和党の大統領候補指名選で、マッケイン議員がかなり善戦したが、これはウェブサイトを通して集めた選挙資金が効果的だったからと言われていた。いくら集まったかは知らないが、マッケインのキャンペーン・サイトhttp://www.straighttalkamerica.com)を見ると、コントリビューションのページと言うのがあり、クレジットカードを使って寄付(25ドル〜1,000ドル)ができるようになっている。この方法なら、選挙資金の出所もはっきりして良いのではないだろうか。
これは、市民から電子政府についてのコメントを受け付け、それを公開もするウェブサイトを構築し、同委員会の審議や今後の立法の参考にするとともに、市民の電子政府樹立への参加意識を高めようというものである。そのウェブサイト(http://cct.georgetown.edu/development/eGov)を見ると、全般的な意見、中心的なリーダーシップ、各機関の管理と調整の問題、IT予算の革新、など10の項目について、それぞれ4〜5のサブ項目があり、それぞれに現状とアイデア、あなたはこれをどう思うかとの質問が書かれており、そのサブ項目を選んで意見を書き込むことになっている。例えば、最近、電子政府の議論の中で話題に上る「Federal CIO」とか「CIO Czar」の新設について、アイデアと言うところでどちらかと言えば置く側に立って、「法律などの要請毎にFederal CIOの責任範囲を決める」か、「ホワイトハウスに置いてコスキネン氏のようなCIO Czarとする」か、あるいは「OMBにおいて実務的なFederal CIOとする」か、どういう形態が良いかとして意見を求めている。出されている意見を読むと、これもいろいろで、「政府側で技術的に電子政府はこう作るべきと言う人と、市民側に立って電子政府はこうあるべきと言う人の二人置くべきではないか」とか、「ビューロクラシーをまた一つかぶせるだけで全く無駄」とか、「予算権限を持たせることが鍵」とか、なかなか興味深い。このような形で、市民の意見(政府職員の意見も多いようだが)を聞くことは、市民ニーズにあった電子政府作りという観点から、非常に重要だろう。
電子政府だけの関係ではないが、米国政府のサイトを見ていていつも思うのは、何をやっているか何をしたいかが常にはっきりと表され、ミニッツならば議論が生き生きと載せられていて、本当にわかり易いなということである。上にも述べたが、GITSボードの最終回のミニッツなど、涙もろい私としてはちょっとほろっとしてしまったりもするくらいである。それは別としても、重要なのは、それぞれの発言者が責任を持って発言していることがはっきりと示されるというところなのだろう。これから電子政府の構築に向けて、日本でも省庁横断的な議論がどんどんと盛んになると思うが、何々の議論があって何が決まったかだけでなく、誰がどうしたいと言ったのかもわかるようなミニッツを公開してもらいたいものだし、そもそもそれに耐えるような議論をしてもらいたいものである。そうしなければ、国民が本当に参加した、真の意味での電子政府へのリインベンションにはならないのではないか。(何を偉そうにという声が聞こえてきそうですが。)
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