![]() |
2002年2月 JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平
米国におけるIT R&D政策の動向 |
はじめに 今回は、米国におけるIT関連のR&D政策の動向について取り上げる。 前クリントン政権下においては、HPCC、NII、NGI、IT2など様々な名称のIT関連イニシアティブが次々と提唱され、R&Dが推進されてきたが、ブッシュ政権になってからこうした名称が聞かれなくなってしまった。そこで、IT関連のR&D政策の全体像が現在どうなっているのかについて「おさらい」してみようということである。 なお、本稿の執筆にあたっては、ワシントン日米コンサルタントからもサジェスチョンをいただいた。
(1) 連邦NITRD予算の分野別分類 国家科学技術会議(National Science and Technology Council: NSTC)のIT R&D省庁間WG(Interagency Working Group on Information Technology Research and Development: 以下IWG/ITR&D)は2001年7月、「ネットワーキング及び情報技術研究開発(Networking and Information Technology Research and Development)」と題する恒例の“2002年度版ブルーブック”を公表した。(http://www.itrd.gov/pubs/blue02/index.html) このブルーブックとは、IT関連R&Dの2002年度予算承認に向けての参考とすべく、2001年度の各省庁R&Dのプログラム別の事業内容及び予算額を記述するとともに、大統領による2002年度予算提案のプログラム別予算額も記述したものである。 まず、2002年度版ブルーブックの中から、米国連邦政府のNetworking and IT R&D(ブッシュ政権では前政権での”IT R&D”という呼称に”Networking”という言葉を加えている)(以下、連邦政府による呼称に倣い、多少わかりにくいがNITRDと呼ぶこととする)の分野別分類を確認しておこう。(表1) この分野別分類は、Program Component Area(PCA)と呼ばれており、2001年度版ではそれまでの分類から大幅な変更が行われたが、今回の2002年度版では2001年度版のPCAをそのまま踏襲している。前政権下で打ち出された、HPCC(High Performance Computing and Communications)、NGI(Next Generation Internet)、IT2(Information Technology for the 21st Century)といったイニシアティブはなくなり、これらのイニシアティブ下で行われていたR&Dは各PCAの下で行われる。
表1 NITRDの分野別分類(PCA)
(出展: 2002年度版ブルーブックから作成)
次に、やjはり2002年度版ブルーブックの中から、NITRDの推進のための組織体制を見ておこう。(表2、図1) NITRDの関係省庁・機関は7省庁12機関に及んでおり、その代表者によって上述のIWG/ITR&Dが構成されている。このNITRDの下に、上記の各分野(PCA)毎にR&Dの目標や活動内容の調整を行うためのグループ(Coordinating Group)が組織されている。また、こうしたPCA毎の調整グループとは別に、連邦情報サービス・応用会議(Federal Information Services and Applications Council: FISAC)が組織され、先進的な情報通信技術の連邦政府自体への速やかな導入を促進するため、連邦政府内のIT R&D関係者と関係者以外との間の連携を進めている。 こうした連邦NITRDの全体調整のための事務作業は、National Coordination Office for Information Technology Research and Development(NCO/ITR&D)(http://www.itrd.gov/)が担当しており、ブルーブックを実際にとりまとめ発行しているのもこのNCO/ITR&Dである。NCO/ITR&Dの経費は、関係省庁・機関がIT R&D予算額に応じた割合で負担している。
(出展: 2002年度版ブルーブック) 表2 NITRDの関係省庁・機関
(出展: 2002年度版ブルーブックから作成) |
J.I.F.に掲載のテキスト、グラフィック、写真の無断転用を禁じます。すべての著作権はJ.I.F..に帰属します。
Copyright 1998 J.I.F. All Rights Reserved.