2003年10月  JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平

ソフトウェアプロセス等の成熟度に関するモデルCMMの概要


4. CMMIの現状

さて、以上SW-CMMを中心にCMMの概要や普及状況について見てきたわけであるが、実はSEIは2003年12月をもってSW-CMMのサポートを終了することになっている。そこで、以下に、SW-CMMにシステムエンジニアリング向けのSE-CMMなどを統合したCMMIの現状について記しておくこととする。

SEIによって1997年から検討が行われてきたCMMIは、2002年1月にVersion 1.1としてとりあえず確定されており、また、そのソフトウェア開発組織向けバージョンであるCMMI-SWが2002年8月に公開されている。
SEIはまた、CMMIを用いたプロセス改善の実践のためのベンチマークSCAMPISM(プロセス改善のための標準CMMI評定手法)を策定しており、SCAMPISMによる評定を行うことのできるリードアプレイザ(主任評定者)のトレーニングコースの提供等を通じて、CMMIの普及を図っている。
SEIによると、2003年8月31日現在のCMMI関連の普及状況は図表3の通りである。既に9,000名を越える人がSEI又はトランジッションパートナーが開催するCMMI入門コースを受講し、224名がSCAMPISM主任評定者として認定されているなど、着々とCMMIの普及に向けた取組みが進められていることが窺える。

また、企業・組織の評定実施状況についてであるが、2003年8月18日付けのAviation Week & Space Technology誌の記事によると、これまでロッキードマーチン、ノースロップグラマン、ボーイング、レイセオンなど国防総省関連の契約者39社がCMMIのレベルを取得しているという。また、これらを含む約70の企業・組織がCMMIのレベル5取得を目指して競い合っているが、多くはまだレベル3しか達成していないという。
このように、CMMIはレベル取得企業数の面ではSW-CMMなどに比べればまだ始まったばかりという状況であるが、上記の記事によると、SW-CMMのトレーニング受講者が10年という期間で1万7,000人だったのに対しCMMIのトレーニングは2年間で8,000人が受講したとのことであり、もちろんSEIによるSW-CMM等のサポートの終了もあって、今後急速にCMMIが普及することが想定される。


おわりに

日本の製造業の品質管理が世界に冠たるを見るにつけ、なぜ同じことがソフトウェアの世界で起こっていないのかという素朴な疑問が生じる。SEI幹部は、日本が1980年代にSoftware Factory構想(シグマ計画)を打ち出したことで製造業だけでなくソフトウェアでもやられてしまうという危機感があったと話していた。発想自体は悪くなかったのだが...、ということであろうか。
それにしても米国は、CMMのようなモデル化がうまい。もちろん、モデル化がうまいということと、実際に出来上がる製品の品質が良いこととは別問題であり、単に製品の品質で勝負するという観点からは、モデルはあくまでもモデルとして参考にするということで良いであろう。しかし、まさに自動車などの製造業において見られるように、サプライチェーンのグローバル化に伴い、どうしても国際的に通用する品質管理モデルが必要となる。日本のソフトウェア産業、情報サービス産業がグローバル化するためには、CMMのような国際的に通用するモデルの導入は避けて通れない道であろう。


(了)

(参考文献)
ソフトウェア開発・調達プロセス改善協議会「ソフトウェアプロセスの改善に向けて〜SPIへの今後の取組み〜」(平成14年4月19日)
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0002639/0/020419spi.pdf

三菱総研「国内及び海外におけるソフトウェアプロセス改善活動の状況に関する動向調査」(平成14年3月)(http://www.ipa.go.jp/NBP/13nendo/13SPI/H13SPI-report.pdf

CMU/SEIウェブサイト(http://www.sei.cmu.edu/

Government Computer News「Feds must weigh worht of vendors' CMM claims」
(8/12/02)(http://www.gcn.com/21_23/news/19576-1.html

Aviation Week & Space Technology「Next Wave: Integrated Processes」(8/18/03)

(参照URL)
http://www.ipa.go.jp/NBP/13nendo/13SPI/H13SPI-report.pdf(図表1、2関連)


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