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98年6月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
米国における
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しかし3月18日、自分は捕まらないと言っていたAnalyzerことエフド・テネバウムも、イスラエル警察に2人の未成年の共犯者とともに逮捕され、自宅で取り調べを受けている。その他にAnalyzerも友人と認めているオレゴン州に住む20歳の青年も逮捕され、こちらは既にFBIに訴追されている。Analyzer逮捕後、彼が加わっていた「Enforcers」というグループが、逮捕への報復のためのハッキングを開始したが、これも3月26日に終結宣言が出され、この捕り物は一件落着となった。
もう一件、これに続いてDODを襲っているもう少し深刻かもしれない事件がある。 4月21日、「Masters of Downloading / 2016216 (MOD)」と名乗る国際的ハッカー・グループが、DODの「Defense Information Systems Network(DISN)」に侵入したと宣言した。上述のブラネセビッチ氏によるインタビューを通じて明らかになったもので、MODは「DISN Equipment Manager(DEM)」と呼ばれるDISNアクセス専用のソフトウェアをDODサーバーから盗み、それを使ってDISNにアクセスしたという。DODによれば、DEMそのものは機密扱いでないと言うが、それを使ってアクセスされた場合に機密情報に触れられる怖れはないかについてはコメントされていない。 MODは19歳から28歳までの米国人8名、英国人5名、ロシア人2名の計15名からなるグループで、既に世界中(米国、ハンガリー、ギリシャ、タイ、日本、中国など)に350ものシステムのルート・アクセス権を入手していると言い、東京をシャットダウンさせるのも面白そうだなどと言っている。DISNから入手したデータについては、テロリストや諜報目的のどこかの政府に売ることもあり得るという脅迫まで行っている。 5月9日には、MODはDISN内の140のネットワークのマップを入手したとして、それをAntiOnlineに示しているが、ダイアルアップ・ナンバーやIPアドレスまでも入ったもので、これによりさらに高度な機密情報にアクセスできることになると言っている。DODはこれに対してはコメントしていないようであるが、4月末にはAntiOnline自身に対して、AntiOnlineの行為がハッカーをエンカレッジすることになっていることへの責任を追及するとの電子メールを送っているなど、DODとしても深刻な事態になりつつある様子が窺える。でも、本稿を書いている5月下旬の段階では、それ以上の展開についての報道はないようであり、ひとまず沈静化しているのであろうか。 上の2つのケースは、軍事システムへの大きな影響に至ったものではないが、政府に限らず、米国のコンピュータ・システム全体に話を広げれば、さらに深刻なケースも報道されている。例えば、98年2月、ハイテク会社「オメガ・エンジニアリング」のシステム内の全ソフトを消してしまう「ロジック爆弾」を植えつけた容疑で、司法省は同社の元ネットワーク・プログラム・デザイナー主任、ティモシー・ロイド容疑者を起訴した。訴状によれば、ロイド容疑者はオメガ社を96年7月に解雇されたのを腹いせに、解雇された10日後、「ロジック爆弾」が自動的にスタートするように仕掛けた疑いがある。「ロジック爆弾」は実際にオメガ社のLANサーバーのデータを全て消し去っている。オメガ社はNASAや海軍のコントロールシステム構築などを依託されており、損害は売上減など、約1000万ドルと見られている。ロイド容疑者が犯罪に関わっていたことを示す裏付けとしては、?「ロジック爆弾」を社のシステムのどこに埋め込めば良いかなど、システムを熟知している社員は数少ない、?バックアップシステムも同時に取り外されており、内部による犯行の可能性が高い、などとしている。
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