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98年7月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
米国における
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2.情報セキュリティのための企業方針
さて、以下では、前項で分析した情報セキュリティの全体的トレンドからさらに進んで、それぞれの企業がIT資産を保護するために用いる措置を概観する。 (1)経営幹部の役割
◆ 自社業務遂行のために必要なITリソースの確保
これらの役割を通じてCIOが最終的に目指しているのは、ITリソースの安全性(security)、整合性(integrity)、可用性(availability)の保証である。CIOが企業の情報セキュリティに果たす責任は重大かつ広範であるため、彼らがセキュリティの重要性を十分に理解していない場合、その影響も深刻なものとなる。そのため、最近の米国のCIOはIT資産への脅威に進んで対抗する姿勢を身につけ、強力なリーダーシップを発揮しなければならなくなっている。具体的な活動内容には、次のようなものがある。 ◆ 情報セキュリティに関する社内スポークスマンとしての活動。社内の全スタッフに対し情報セキュリティの確保・強化を呼びかけ、特に戦略的方向性やリソース配分を決定する経営幹部にセキュリティの重要性を認識させる。
(2)情報セキュリティへの取り組み
第2は、「わが社の情報セキュリティ・メカニズムが損なわれた場合、どんなリスクが生じるか?」という問いに発する「リスク管理アプローチ」である。このアプローチの柱となっているのは、IT資産が直面するリスクを「容認し難いもの」と「それほどでもないもの」とにふるい分け、自社予算が許す範囲内で現実的に対応するという発想である。第1のアプローチに比べ、分析的・実際的なこのアプローチは、具体的脅威を一つずつリストアップする代わりに、いくつかの共通するリスクを割り出し、それぞれを容認できるレベルに抑えるようなメカニズムを考え出すことを目指す。 リスク管理アプローチの情報セキュリティ対策は、担当者にも、単にマニュアル通りにシステムを管理するのではなく、リスクの程度を分析的に判断し、適切な行動を取ることを要求する。また、固定的な状況における完璧な防禦体制を確立するのではなく、ダイナミックに変化する環境の中で一定水準以上のセキュリティを保つことを目指している。しかしそれゆえに、担当者が判断を誤ったり検討作業の継続を怠ったりすれば、セキュリティが維持できなくなるという問題もある。また、現実的な防禦策を目指すということは、どんなに有益であったとしても、予算に合わない一部の技術やシステムの導入は断念せざるを得ないということでもある。 このように、情報セキュリティに関する2種類のアプローチには、それぞれ一長一短があることから、ベスト・ソリューションは、両者をバランスよく組み合わせることによって達成される場合が多い。企業にとって、ITリソースに対して想定される攻撃主体やその手段を知ることは、今日でもなお重要と言える。しかしそれと同時に、変化の激しい今日の技術環境にあっては、自社にとってのリスクを程度に応じて整理し、決められた予算の中で最適な対応を行うことも不可欠になっている。
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