98年8月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

グローバル・エレクトロニック・コマース
フレームワーク発表から1年(前半)-4-

4.NYT紙による1年後のレビュー
さて、6月14日付けのニューヨークタイムズ紙が、「米国のインターネット政策には二つの大きな欠陥があるとの批判」と題し、実はこの報告で私がやりたいようなまとめの記事を載せてくれている。何だ、これを最初に書いておいてくれれば、ここまで読まなくても済んだのにと思われてしまうかもしれないが、せっかく分かり易くまとめられているので、概要を示しておく。

クリントン政権がEコマース推進のための野心的なゴールを設定してから1年立つが、政府内の矛盾した暗号政策と進まないプライバシー管理の二つが、これから立ち上がろうとするEコマース産業を舵のない船のように漂流させていると批判されている。Eコマースは来る10年の商業活動のドライブとなると広く考えられているが、この二つの点で行き詰まっていることが、IT問題への政府の取組み全体の生産性に暗い影を投げかけている。

マガツィナー氏は、先週のインタビューに対し、彼が大統領のフレームワークとして設定したタックスフリーで自己管理型のデジタル・マーケットプレースに係る1年のゴールは、概ね達成できたと宣言した。彼曰く、政権が達成した最も大きな進展は、インターネット・コマースを非課税のままに維持しようと言う点で国際的な協調を勝ち得たことである。マガツィナー氏はまた、国内課税についてはモラトリアム法案が通るだろうし、インターネット・アドレスの発行については、自己管理と競争を導入するためのフレームワークができており、議会はサイバースペースでのデジタル・コピーライトの保護協定を批准する準備ができていることを付け加えた。
民間においては、企業とインターネット団体が子供たちのネットへのアクセスを親がコントロールするオプションを提供するためのフィルタリング製品やレーティング・システムを開発している。それらの努力はこれまでのところインターネットのコンテンツに対する政府のコントロールを防ぐことに役立っている。

「もし、1年前に、今我々がいる段階まで到達できるだろうかと聞かれていたら、私は慎重に答えていただろう。それ程我々は多くの進展をしたのだ。」とマガツィナー氏は言っている。
オンラインでのプライバシー保護のための効果的な規定を作るという目標に対してホワイトハウス自身が引いた7月1日という期限までまだ2週間あるものの、政府は先週連邦取引委員会(FTC)が出したレポートに対応しようと焦っている。この報告は、10ヶ月以上に及ぶヒアリングと調査の集大成として、プライバシー問題を自ら取り締まるとする産業界の努力についてもの悲しい絵を描いている。そして、子供をオンラインから保護するための法規制を策定すべきとの提案を行っている。産業界のグループは、政権が民間によるリードに任せようとする約束を維持していることを賞賛しつつ、もう少し時間があれば、適切なコントロールができるようになると言っている。しかし、プライバシー擁護論者や学会のオブザーバーは政府の姿勢は受け身に過ぎると批評している。

マガツィナー氏を含めて誰もが一致しているのは、政権が最も政策的矛盾点が目立っている一つの分野で何の進展も達成できなかったと言う点である。それは暗号技術の政府規制への支持が続いているという点である。テロリストや麻薬カルテルが彼らの犯罪を隠すために強力な暗号を使用しているとする法執行当局の関心に屈し、政権は米国企業が強力な暗号を自由に輸出することを拒否してきた。しかし、FBIや他の取締当局が規制すべきとしている程度のセキュリティーは、クレジットカードや他の重要な取引でハッカーやオンライン盗難から安全と見なされるために必要なセキュリティーの程度と同じなのである。

「Eコマースは、インターネット上で人々を保護するために、強力な暗号を使わなければ成功できない。」とビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)のロバート・ホリーマン専務理事は言う。暗号政策がどのくらいコンピュータ産業にとって重要かを示すものとして、先週マイクロソフトのビル・ゲイツCEOは、彼のトップ・ライバルとともに、リノ司法長官とフリーFBI長官との非公開の会談に臨んだ。「確かに我々の政策の中で、この点だけが他のアプローチと一貫しないものであり、それは法執行当局の関心があるからだ。」とマガツィナー氏は言う。

プライバシーについては、マガツィナー氏は自主規制が失敗したと言うにはまだ早すぎるとしている。オンライン・ビジネス界の多くの人はそれに同意している。「人々はこれが全く新しい事象であると言うことを理解すべきだ。技術は人々が自分のプライバシーは保護されているとの自信を与えるため、まだ開発されているところなのだ。」と全米情報技術協会(ITAA)のハリス・ミラー専務理事は言っている。

その認識に緊急性を与えるのは、EU諸国が10月から強力なプライバシー保護規制を発効し、それらの方策が米国企業の海外活動に重大なインパクトを与えることになると言う事実である。マガツィナー氏はここ数週間世界を駆け足で回り、他の国々に、自主規制は必ずうまくいくので、彼らがEUモデルに従わないように思いとどまらせようとしている。

プライバシー・ガイドラインのドラフト作りを助けるための産業界と政権のサミットが何ヶ月も計画段階のままにあった。FTCがオンラインでの子供のプライバシーの惨憺たる状況を報告した日に、ようやくその最終日程が6月23、24日に設定された。(以上は記事本文の抜粋で、以下は記事付属の表の仮訳)

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