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98年8月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
グローバル・エレクトロニック・コマース
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●3.ドメイン・ネーム・システム
インターネットのドメイン・ネーム・システム(DNS)については、昨年のフレームワークの発表と同時に、商務省のNTIAから意見聴取の公告が成されて、議論が始まっている。もちろん、その前から、ネットワーク・ソリューションズ社(NSI)がNSFから登録管理を受託しているcom, net, orgというトップ・レベル・ドメイン(TLD)に、新たにfirm, shopなど7つを加えるとの提言も民間から出されていたが、NTIAはニュートラルな立場に戻って、DNSの原則、組織、TLD、トレードマークなどの問題について意見を求めた。 そして、提出された430もの意見などを基に、98年1月30日、商務省のNTIAは「インターネットのネームとアドレスの技術的管理」と題する計画をインターネット上に公開した(これは緑書と呼ばれるもの)。緑書では、DNSの米国政府による中央管理を民間に移行するとともに、TLDを追加することで、より活動内容に即したドメイン名が獲得できるようにしようというもの。その原則として、インターネットが引き続き安定的であること、競争を導入すること、調整は民間によるボトムアップ型であること、国際的な意見を代表することの4つを掲げている。具体的な提言としては、現在国防省の委託を受けてInternet Assigned Numbers Authority(IANA)が行っているインターネット・ドメイン名にインターネット・プロトコール番号を割り当てていく作業を、新たな非営利会社(コーポレーション)を組織して移行していくことが中心となっている。TLDの登録管理には競争を導入し、NSIは従来からの3つのTLDを他の新規に参入してくる民間企業とともに登録管理し、新たに加える5つのTLDは新規参入企業が分け合って登録管理する。コーポレーションへは、2000年9月30日までに、DNSの全ての責務が委譲される。 NTIAはこの緑書に対する意見を再び求め、3月までの間に寄せられた650にも上る意見を入れ、6月5日に「インターネットのドメイン名とアドレスの管理に関するポリシー・ステートメント」(白書)として発表した。この白書においても、コーポレーションに、DNSの責務を移していくという基本路線はもちろん変わらないが、いくつかの点で、より政府の影を見せないように変更が加えられている。例えばコーポレーションのボードについて、緑書ではボードメンバーを15名として、その内訳についてどのような性格の機関から何名ずつと指定していたが、白書ではこれを明確に示していない。TLDについても、5つの新規追加については言及せず、コーポレーションで決めることとしている。その登録については、緑書では、3つのTLDのNSIによる継続的な登録管理を認めていたが、全ての登録管理機関が同様の競争条件に立つことにされた。また、トレードマークの問題について、各国の法制度の違いもあることから、WIPOにトレードマークとドメイン名の間の紛争への統一されたアプローチについて勧告を出してくれるよう要請している。(http://www.ntia.doc.gov/ntiahome/domainname) このように一見、緑書より白書の方が後退しているのではないかとも思われるが、NTIAの本件の責任者であるベッキー・バー女史は、「受け取った意見の多くは民間にリードさせろと言うもので、それに従った」と述べている。(リアル・オーディオで記者会見の模様が聞ける。)これについて、結局政府はできてもいないコーポレーションに全ての調整を丸投げしただけで何も決められなかったのだという見方も成されているが、大方は、インターネットの特徴である自主管理に委ねるという正しい選択をしたと、肯定的に受け取っているようである。 これから9月末までにコーポレーションのボードが選定されることが期待されているのだが、そのボードの選定自身が一番難しいのではないかとも言われており、夏休み以降、その行方に目が離せないというところである。 ●おわりに
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