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98年9月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
グローバル・エレクトロニック・コマース
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● 2. 知的財産権の保護
インターネット上の商取引における知的財産権の効果的な保護については、96年12月に締結された「著作権条約」と「実演・レコード条約」の国内実施法の制定がフレームワークの目標とされていた。加えて、データベースの要素の保護の検討、GII構築に重要な特許権の保護の促進、トレードマーク保護の各国の差異から生じる問題の解決等に努力するとも掲げられていた。 両条約の実施法については、上院では司法委員長のオリン・ハッチ議員(共和党、ユタ)が提出したS.2037「Digital Millenium Copyright Act of 1998」法案が5月14日に可決され、下院では知的財産権小委員長のハワード・コーブル議員(共和党、ノースカロライナ)が提出したH.R.2281「WIPO Copyright Treaties Implementation Act」法案(最終的には上院案と同じ名称に変更)が8月4日に可決された。これらの法案について、その詳細な法解釈等は専門の方にお任せするとして、範囲の広い下院法案を基に概要のみ以下に示してみよう。 (下院法案の構成)
さて、この法案により、これまでももちろん現行著作権法で保護されていたソフトウェアや音楽であるが、オンライン上でも保護されることが明確になったわけで、このためこれまで著作権使用料を払ってこなかったいわゆるインターネット・ラジオやブロードキャスティングが、それを払わなければならなくなったということである。加えて、保護迂回技術を違法としているところが特徴(WIPO条約には含まれていない)であるが、例えば暗号研究などのためにはそれらの技術を必要とすることもあり、例外規定が不十分ではないかとの意見もある。その点については、法案の中にも配慮があり、2年間の猶予期間中に商務省が保護迂回技術の禁止が、研究などのための著作物のフェアユースにどのような影響があるかについて研究して報告するよう命じている。(フェアユースというのは、リバースエンジニアリングなどのための公正な使用であれば著作権の侵害の訴えに対して責任は問われないとする米国著作権法にもともとある考え方。) この法案の中でもっとも議論を呼んでいるのが情報収集物反海賊行為法の部分である。これは、コーブル議員が別に提案して5月19日に既に下院で可決されていたH.R.2562「Collections of Information Antipiracy Act」法案を、ここに取りこんだものであり、上院には5月20日に回されているが、審議はされていないものである。これは、現行著作権法では保護されないいわゆるスウェット・オブ・ブロウ(公開データを額に汗して丹念に集めたような)のデータベースでも、不正に使用されてその作成者に被害を与えた場合には違法とすると言うもの。研究などの目的での使用については例外とはされているものの、その範囲は狭すぎて大学での研究などに問題が生ずると言う意見も出されている。一方で、データベース会社から見れば、最新情報を検索が容易なフォーマットで作成し提供するためには、その製品の保護が必要であり、EUのデータベース指令はより広い保護を打ち出していることから、米国もそうしなければ不利になるとの反論をしている。 このように、3年のもの間、議論が続いてきたオンラインでの知的財産権問題については、ようやく決着も見えてきたところであるが、両院の法案の調整が、特にデータベース保護の部分をどう扱うかと言うところでまだ難航しそうであり、もうしばらく議論は続くであろうというのが一般の見方のようである。
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