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98年910月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
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●(5)中小企業のY2K対応支援
5月11日に商務省傘下のNISTは、小規模企業への製造技術の指導普及プログラム(MEP: Manufacturing Extension Partnership)の中で、Y2K対応支援を行っていくことを発表した。これは97年末で従業員2000人以下の企業の88%が、まだY2K対策に取り掛かっていないと言う認識に基づいて始めたものであり、概要は以下の通りである。 ◆ 全米各州にあるMEPセンターは少なくとも一人のY2K「チャンピオン」担当者を任命し、センターのY2K対応支援活動を調整する。特にミシガン製造技術センター、五大湖製造技術センター、ユタMEPセンターの3箇所の拠点と協力する。 ◆ 各MEPセンターの普及指導員がY2Kサービスを行うためのハンドブックである「ツールキット」を開発する。ツールキットには各センターで開催するY2K問題への意識向上のためのセミナー用資料も含まれる。さらに、小規模企業がプログラム修正作業を行うのに必要なツールやソースを識別するのを助けるための参考資料も含まれる。 ◆ 自己アセスメントのためのクエスチョネアやY2K問題の包括的情報はMEPのウェブサイト(http://www.mep.nist.gov)からダウンロードできる。 2. 連邦議会におけるY2Kへの取組み ●(1)Y2K情報公開法 これまでY2Kに関し、いくつもの法案が提出されてきたが、ボブ・ベネット上院議員(共和党、ユタ)の出したCRASH保護法案(前回報告)がSECの通達の形になって実質的に採用された以外は、審議が継続されているものはなく、最終的にクリントン大統領の講演に出てきた「グッド・サマリタン法案」に絞られている。同法案は、7月30日に上下院にそれぞれ、S.2392/H.R.4355「Year 2000 Information Disclosure Act」として提出された。9月11日付けのワシントン・ポスト紙などによれば、8月の議会休会中にも、本法案を巡って産業界と法廷弁護士の間で激しい駆け引きがあったようである。つまり、産業界にとっては、本法案によって、Y2K問題に係る将来のプロダクト・ライアビリティ(PL)訴訟が少しでも減れば望ましいし、一方の法廷弁護士にとっては、表向きの反対理由は本法案がPLに対する消費者の法的権利を侵すというものであるが、露骨に言えば自分たちのメシのタネを減らすなというところである。 そもそも本法案の発端は、この春にジョン・コスキネン議長主催のランチにおいて、電話会社の首脳が、Y2K情報を提供して、あとからそれが不正確だったと言うことで訴訟を受けることから保護されることが必要だとの陳情をしたことに始まる。政府は法案の準備のために法廷弁護士の協会に相談するようなことはせず、主に電話会社に助けてもらったようである。政府法案が7月30日に出された直後の8月6日、他の産業界のより広い保護の期待を受けた下院法案、H.R.4455「Year 2000 Readiness Disclosure Act」がデビッド・ドレイヤー議員(共和党、カリフォルニア)とアンナ・エシュー議員(民主党、カリフォルニア)から提出されている。8月中に産業界のグループが集まり、弁護士とロビーストも交えて、両法案のコンセプトを支持するための妥協案を探ってきた。主な出席者は、全米製造業協会(National Association of Manufacturers)、ベル・アトランティック、GTE、米国電話事業者協会、エジソン電力協会などである。9月の第2週にまとまった妥協案は、関係者に言わせると「訴訟の関心の刃を鈍くするもの」であり、企業が善意で提供したステートメントが後で間違いであったと判明しても、当該企業を法的に保護すると言うものである。 上院では産業界において妥協案がまとまった時点で、上院司法委員会委員長のオリン・ハッチ議員(共和党、ユタ)は、この妥協案を翌週の上院法案審議のベースとして使いたいとの意向を示していた。その通り、9月17日の司法委員会では、唯一提出されているS.2392の審議において、ハッチ委員長がこれをタイトルの変更まで含めて全面的に差し替えるという改定案「Year 2000 Information and Readiness Disclosure Act」を出し、18対0で可決されている。 その後9月28日夜に上院本会議を通過し、下院に回されている。クリントン大統領も29日付けで上院通過を歓迎する旨のコメントを発表している。下院には上述のように2つの法案が出されているが、下院の妥協案が先に上院を通過してまた下院に戻ってきた形になり、下院では審議促進のため、この上院可決法案についてのみ審議することが決まっている。残り1週間の議会日程の中でも、本法案は優先度が高いので、下院を通過することは確実のようだが、ここでは最終案に近い形と思われる上院可決法案の概要を示しておくことにする。
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