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99年1月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
98年の回顧と99年の展望 -4- |
3.PCの動向 最後にやはり99年のPCの動向を占っておくことが必要だろう。と言っても、どのくらい売れるだろうかと言うのは調査会社に任さざるを得ない。IDCが12月8日に発表したところでは、98年第4四半期の世界のPC販売台数が前年同期比で12.2%増加するとし、98年全体では8,920万台と前年比11.1%、来年は12.8%増の1億60万台と予想している。また米国市場の第4四半期の伸びは12.2%としている。これとはベースの合っていないデータを並べるのもどうかと思いつつも、第4四半期の予測は出されていないが、データクエストの方の数字(ややこちらの方が大きい)を以下に挙げておく。
さて、数字は数字として99年のPC市場の様子はどのようなものになるのであろうか。データクエストによれば、98年末で米国家庭へのPCの普及率は50%(97年は43%)に届き、そのうちの80%はインターネットにアクセスしているという。他の見通しなどに比べるとちょっと80%というのは大きすぎるような気がしないでもないが、これからもわかるように、コンシューマーの世界ではPCの伸びはインターネット・アクセスで支えられていくように思われる。8月に発売されたiMACが広く受け入れられたのも、デザインの斬新さはもちろんだが、インターネットに焦点を絞ってシンプルにしたところによるところが大きい。初めて家庭でインターネット・アクセスのためにPCを使う人にとっては、OSがどうのこうのなどというのは関係なく、簡単で可愛い方が良いのである。コンパックが10月に出したプレサリオ2266(699ドル)もインターネットPCと銘打って、わざわざインターネット専用のキーを4つ(インターネット・アクセス、eメイル、サーチ・エンジン、エレクトロニック・ショッピング)付けているぐらいである。また、12月にはデルもコンシューマー向けPCにAOLサービスを搭載すると発表している。ユーザーの目を引くこともできるし、低下するPC価格をサービス搭載によるプロバイダーからのリベートで補うこともできるということなのだろう。 今後5年ぐらいで情報アプライアンスがPCに代わっていくと言うような予測もあるが、上述したようなデジタルSTBなどが家庭に入って統合サービスが本格的に展開されるのはまだ2〜3年先であろうし、そのときでもやはりキーボードを持ったPC的なものはなお家庭でも必要とされるであろうことから、PC市場はしばらく安泰であろう。しかし、BTO (Build-to-Order)メーカーが有利であることと、PCの低価格化になお拍車がかかることは明らかであり、99年のPCメーカーは上位4〜5社に入っていたとしても、ビジネス顧客に広く受け入れられるビジネス・モデルを確立しているデル以外は、決して安泰とはいかないだろう。 99年のPCの動向に影響を与えると思われているであろうものに、マイクロソフトの反トラスト法訴訟の行方がある。しかし、この前哨戦であった97年の訴訟(ブラウザ戦略の95年のライセンス供与に関する同意審決違反)がウィンドウズ98に影響を与えなかったように、現在審理中の訴訟が、99年内にマイクロソフトに大きく影響を与えるとはあまり考えられない。5月の司法省と20州による提訴から、10月19日に口頭弁論が開始され、12月17日に休暇に入るまでの審理について、私も一応報道などを追っては来ている。これまでのところ司法省側の証人しか証言しておらず、基本的にはマイクロソフトは防戦一方で、不利な状況にあるように見える。ネットスケープを使っていたAOL、イントィット、アップル等がマイクロソフトのインターネット・エクスプローラーに乗換えたのは独占力をたてにしたマイクロソフトの圧力によるものではないかというのが議論の中心である。また、元々これを裁くジャクソン判事は、前哨戦においてマイクロソフトにブラウザとOSを分離することを求める仮裁定を行った人であるから、最初から司法省側にやや傾斜していると言う見方もある。しかし、AOLのネットスケープの買収が発表されたことにより、ソフトウェア分野の市場競争が正常に機能している証拠であるとの見方がやや力を持ちつつもある。例えばジャクソン判事が、AOLのネットスケープ買収が本訴訟に直接的な影響を与える可能性があるとして、同買収関連の文書をマイクロソフトが検討することを許可しているし、20州のうちサウスカロライナ州がこの買収を根拠に訴訟から降りる決断をしている。 99年に入って、この訴訟がどちらの勝訴で終わるのかを予想することはやめておくが、どちらが勝訴しても敗訴した側が上告をすることは確実であろうことから、時間はまだまだかかるだろう。また、もしマイクロソフトが敗訴した場合、司法省と19州がマイクロソフトにどのような制裁を科そうとするのか、それを決めるまでに時間もかかるだろう。例えば、企業を分割させるしても、どう分割すれば効果があるのかなど検討するのはそう簡単なことではない。いずれにしても、99年中に発表される予定の(遅れ遅れになっているのでまだわからないが)ウィンドウズ2000(旧名NT5.0)に影響が及ぶことはなさそうである。では何も変わらないのかと言うとそうでもないのだろう。現にこれまでマイクロソフトに最も近いとされていたインテルやコンパックなどが、ややマイクロソフトと距離を置きつつあり、必ずしもいろいろな分野での協力が無条件に得られるようには、なっていかないだろう。また、消費者も(対クリントン大統領と同様に)ビル・ゲイツCEOに対する好感度を下げていくであろうことから、製品の売れ行きに何らかの影響はあるだろう。と言ってもOSではPCではアップル、サーバーではLINUX。UNIXが競合してくるだろうが、やや選択肢としては弱いが。そうは言っても、審理に皆がうんざりしてきたころに、クリントン大統領のようなことになるかもしれないので、この訴訟については引続きウォッチしていかなければならないだろう。
2000年問題やR&Dなどについても述べたかったのだが、まだ取り上げたばかりでもあり、そしてまたすぐにも取り上げなければならない問題であるから、今回は省略させていただく。99年はテルコ(電話会社)ウオッチャーになろうなどと思っているわけでもないのだが、98年も年末になってからいろいろなニュースが飛び交ったことから、本稿ではそこに焦点が当たることになった。しかし、米国のこの分野の動きは速い。ITハードやソフトの発展は、着実な技術開発により目に見えながら進んでいくが、新たなサービスの展開は、ベンチャーの出現、企業の連携などにより急激に進んでくる。日本でも景気対策や予算措置で情報通信分野への投資が着々と進んでいるのだろうが、後追いだけではじりじりと離されていってしまう。ここは寄り道をしないでファイバー・トゥー・ザ・ホームで逆転を狙うしかないのではないだろうか。と言っても、今の日本のコンテンツでは、インターネットを本当に使いたい、オンライン・ショッピングがしたい、さらにはインターネットがないと仕事も生活もできなくなるというような状況でにはまだまだ程遠い。ファイバーに流すまでもないし、PCですらまだ必要がないということになってしまう。コンテンツの整備にも本腰を入れることが必要なのだろう。さあ、99年も皆様のご指導をいただきつつ、米国のダイナミズムを追いかけて行こう。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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