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99年10月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
米国におけるインターネット取引標準 -4- |
順序が逆になったが、上述のような様々な取引標準を支えているXML (Extensible Markup Language;拡張可能なマーク付け言語)について、少し触 れておきたい。XMLは96年6月からW3Cで開発がスタートし、98年2月に1.0 版が承認された言語であり、W3Cが説明用に掲げている例を引くと、以下のよう な文書が書ける。<>で囲まれた部分がタグと呼ばれ、これが文書の構造やデータ の内容を明示するためのマークアップ記号である。顧客情報を示すのには、どのよ うな要素を示すことが必要かを検討し、nameやaddressなどのタグのセットを定 義することで、顧客情報という文書型定義(DTD = Document Type Definition) が標準化されて顧客情報のXML文書が共通に使えるようになるのである。
また、OASISの中に、XML.orgというグループが組織されており(IBM、オラ クル、SAP、サン・マイクロシステムズが4大スポンサー)、XML産業のポータル と銘打ったウェブページ(www.xml.org)を提供している。このウェブページの中 に、XML仕様を策定している団体という項目があり、上に示してきたような各種 コンソーシアムによる活動の一覧がある。それによれば、現時点で活動分野として、 電子商取引、EDI、金融はもちろんのこと、自動車、通信、教育、ヘルスケア、人 的資源、法律、科学、ソフトウェアなど27の分野で、全67の団体によるXML仕 様の策定努力が行われていることがわかる。 ソフトウェア開発側の動きもXML.orgなどで見ることができるが、コマーシャ ルのXMLソフトウェアも次から次へと各社から発表されつつある。中でもやはり マイクロソフトの動きが最も華々しいが、この9月13日にサンフランシスコにお いて、同社のスティーブ・バルマー社長が明らかにしたウェブ・アプリケーション開 発戦略は注目に値するものである(www.microsoft.com/presspass/exec/steve/09- 13webdev.htm)。非常に複雑なロードマップに見えるが、一言で言えば「XML everywhere」という戦略のようである。3月に発表したIE5.0が初のXML対応の ブラウザであったことを皮切りに、オフィス2000もそうなったし、次のウィンド ウズ2000にも高速のXMLパーサー(XMLデータの構造や意味を解釈するソフト ウェア・コンポーネンツ)を入れると言う。そして、これらの製品開発の中核に来 るものとして、3月に発表した「BizTalkフレームワーク」があるようである。こ れは、異なる企業の電子商取引サイト上で実行されているウェブ・アプリケーショ ン間の相互運用を可能にするXMLベースの一連のソフトウェア仕様である。その 後も開発が進みつつあるようで、「BizTalk.org」というウェブサイト (www.biztalk.org)において情報提供を行っており、一気に業界標準にまで持っていこうと言う意気込みである。 バルマー社長のアナウンスメントに対しては、様々な解説や見解が専門誌などに 寄せられているが、またマイクロソフトによる実質的なXML支配が始まるのでは ないかというような論調も見受けられる。しかし、IBM、サン、オラクルなども 多くのコンソーシアムに名前を連ねて同様の動きをしており、そのような論調が出 るほど先行競争が激しいと言うことなのだろう。
ほぼ時を同じくして9月15日には、UN/CEFACT(The United Nation body for Trade Facilitation and Electronic Business)とOASISが、同様の懸念から発表 を行っている。両組織が共同で「Electronic Business XML Working Group」を 設置し、全ての電子的なビジネス・データの交換が、XMLを使ってコンシステント に行い得るような技術的フレームワークを開発するというものである。OASISの プレジデントであるビル・スミス氏(サン・マイクロシステムズ)は、「グローバル・ ビジネスを効率良く行っていくためには、XMLの仕様が共通のフレームワークを ベースにしていることが不可欠である。しかし、今のところそのフレームワークが ないため、世界的に様々な産業グループが、多くの、しばしば競合する努力を行っ ている。この新しいワーキング・グループが現在行われている混乱し、重複する努 力を終わらせることになるだろう。」とコメントしている。このワーキング・グルー プによるフレームワークの開発は今後18ヶ月にわたって行われ、成果は uncefact.orgとXML.org上でパブリックドメインとして公開される予定である。
上に見てきたように、XML革命はまだ始まったばかりだというのに、あちらこ ちらでの小競り合いがやかましくなりつつある。日本の企業にあっても、是非、XML ベースの取引標準策定について、どのような動きが始まっているのか、OASISや XML.orgのウェブサイトで確認されることをお勧めしたい。もし、自社のビジネ スに関連するコンソーシアムが既に組織され活動しているようであれば、会員にな るべきであろう。これからはボーダレスなサプライチェーンが当然となる時代であ り、XMLがいくらフレキシブルだからと言って、後になって日本特有の仕様のこ れやらあれやらを追加してもらわないと使えないというわけには行かなくなるかも しれない。もちろんこれまでのように米国で標準ができた後に、やがて日本語化さ れたソフトウェア・ツールが出てきてからという考え方もあろうが、伝統的なEDI を普及させてきたこれまでの時代とボーダレス化の度合いが全く違ってきているこ とを忘れてはならないだろう。幸いにも、まだ小競り合いの段階であって、まとま りを見せていない。EDIで整然と訓練を積み重ねてきた日本も革命で活躍できる チャンスは大きいであろうし、既に米国にいる日本企業は小競り合いに参加してい る。いずれにしろ革命の行方が見えてきてから参加しようというのでは遅すぎる。 さあ、思いきってXML革命に飛び込もう。
9月14日、国務省は世界196カ国の米国大使館・領事館の情報を基に作成してい る「Consular Information Seets 」(travel.state.gov/travel_warnings.html))の 中に、Y2K情報を盛り込んだ旨を発表。国毎の危険度のレーティングはないが、 各種のプレス報道などで、その時期の訪問が懸念される国として名前が挙げられた のは、ロシア、ウクライナ、中国、パキスタン、イタリアなど。 |
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