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2000年5月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
米国の東北部におけるIT産業集積の動向 -4- |
4.グレーター・ワシントンDC地域 グレーター・ワシントン地域は中心のワシントンDCと、それをとりまくメリーランド州南部とバージニア州北部で構成される地域で、人口は510万人と言われる。(まだあまり定着していないが、「シリコン・ドミニオン(Dominion:領土)」と呼ばれることもある。)この地域は、当然のことながら連邦政府との関わり合いが深く、連邦政府のコンピュータ、通信などのエンジニアリングを支えるところから産業がスタートしている。インターネットの原型であるARPANETの開発者達のスピンアウトもAOLやUUNETなどのサービス・プロバイダーを発展させる原動力となった。 (地域の特徴)
(発展の状況) グレーター・ワシントン地域は、表に示すように既に97年の段階でハイテク就業者数、企業数ともシリコンバレーを抜き、第1位となっている。これらの集積の中心はDCの西側を囲みダレス国際空港までをカバーする1千平方キロメートルの面積と100万人の人口を擁するフェアファックス郡である。この郡のみで約2,200社のハイテク企業とその雇用者10万人を抱えている。 フェアファックス郡にはインターネットの米国東部の主要なハブが位置しており、世界のインターネット・トラフィックの約半分が同郡を通過する。そのためもあって全米の9社のフルアクセス・インターネット・プロバイダーのうちの3社、AOL、PSINet、UUNetが同郡を本拠地としている。また全米最大の400以上の通信関連企業が集積しており、MCIがもともと本社を置いていたほか、ケーブル&ワイヤレスなどの外国系企業、また前回レポートしたネクステルやテリジェントなどのワイヤレスの新興企業も同郡に本社を置いている。
(Source: GWI Analysis of Dunn & Bradstreet, US Bureau of
Labor Statistics 1997)
ベンチャー・キャピタルも充実しており、フェアファックス郡にも20のキャピタルがオフィス構えており、97年が1.0億ドル、98年が1.9億ドルであった投資額が、99年には6.1億ドルに急増している。 (最近のイニシアチブ) フェアファックス郡の「Fairfax County Economic Development Authority(FCEDA)」(www.FairfaxCountyEDA.org)が提供しているサービスには以下のようなものがある。 ・ 郡のビジネス・ベースやハイテク産業セクターに関するマーケット・リサーチの提供 ・ ポテンシャル・ビジネス・パートナーの紹介 ・ オフィス候補地のフリーツアーを含む様々なサービス提供 ・ オフィス・スペース用の不動産データベースの検索 ・ オフィス設置の可能性などをリストアップした総合的な資産パッケージの作成 さらに、FCEDAはインキュベータ「e-Incubator」の共同運営も行っており、この中に入るベンチャー企業に対して1年目50万ドル、2年目40万ドル、3年目30万ドルまでの投資を行う。 他のイニシアチブとしては、バージニア州として「Virginia Economic Development Partnership」(www.yesva.com)が、他州からのリクルートを積極的に行っている。また、グレーター・ワシントンとしては、「Greater Washington Initiative」(www.greaterwashington.org)という非営利団体が、各種の情報提供などを行っている。 おわりに 今回のレポートは、当初は日本のIT産業集積の参考になるようなものをとも思って書き始めたのだが、結局簡単な3地域の紹介だけに終ってしまい、やや反省している。以前、ニューヨークのインターネット・ベンチャー企業を取材した際に、政府の振興策などはほとんど使っていないし、良い技術とアイデア、そして起業のプロを連れてくれば、どこでも成功すると言うようなことを聞いたことがあったので、そういうものかと思い込んでいたのだが、今回調べてみると、政策的な支援が決して使われていないということでもなさそうである。とは言いながらも、起業を支えるているのは人と技術であり、シリコンアレーの55ブロード・ストリートのようなビルを提供すれば、立派なニューメディア企業が続々と集まってくるかのような錯覚をしては、やはりいけないのである。3地域とも今後の発展は、如何に熟練した人材を確保し続けられるかと言うところにかかっていると言っているように、人材の無いところに集積はありえない。回り道のようだが、日本でもどうやったらITの優秀な人材を育てられるかというところに力を入れるしかないのだろう。 |
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