4.インターネットとメディア・ビジネス
(1)ブロードバンドの普及
「ブロードバンド」は、2000年においても引き続きインターネット接続に関する最も重要なキーワードであったと言えるであろう。
ブロードバンドの普及状況については様々な調査会社が調査を行なっているが、ここでは2001年1月30日に調査会社TRI(http://www.tr.com/)が発表したインターネット接続に関するOnline Censusの数字を挙げておこう。(表3、図3参照)
カテゴリー別の契約者数には重複があると思われるので注意する必要があるが、有料のダイアルアップ接続が4,600万人に達しており引き続き主流であることには相違ない。無料ISPの2000年第4四半期の成長率はわずか1.36%であり、このビジネスモデルの限界が見えてきている。
また、注目のケーブル・モデム対DSLの争いでは、2000年末時点ではケーブル・モデムがDSLの2倍近い契約者を獲得し依然としてリードを保っているが、DSLが2000年第4四半期に驚異的な伸びを記録したことは注目に値する。
2001年以降のブロードバンドの普及予測については、やはり様々な調査会社が数字を発表しているが、ここでは省略する。いずれにしても、ケーブル・モデムとDSLを中心に一層のブロードバンドの普及が進むことは間違いないであろう。
ただし、ケーブル・モデム、DSLともにまだ技術的問題を抱えており、また今年に入って独立系DSLサービス・プロバイダのノースポイント・コミュニケーションズが破産法11条の適用を申請したように競争激化に伴い事業環境も悪化しているため、最終的にどのカテゴリーのブロードバンド・サービスが、またどの企業が勝ち残っていくのかについては、まだまだ紆余曲折が予想される。
表3 2000年末時点のカテゴリー別のインターネット接続状況
カテゴリー
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契約者数
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4Q/00成長率
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有料Dial Up ISP
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46,097,054
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9.15%
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無料ISP
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14,850,000
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1.36%
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ケーブル・モデム
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4,178,550
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19.21%
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インターネットTV
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1,200,000
|
5%
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DSL
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2,357,500
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86.47%
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合 計
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68,683,104
|
8.59%
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(出展: Telecommunications Reports International)
図3 2000年末時点のカテゴリー別のインターネット接続状況
(出展: Telecommunications Reports Internationalデータから作成)
(2) AOLとタイム・ワーナーの合併
インターネット接続を巡る2000年最大のトピックスは、2000年1月に発表されたAOLとタイム・ワーナーの合併であろう。インターネット・サービス世界最大手のAOLとメディア大手のタイム・ワーナーとの合併構想は、情報の新しい流通チャネルであるインターネットを牛耳る企業とコンテンツを牛耳る企業との大型合併であるため、連邦取引委員会(FTC)と連邦通信委員会(FCC)がそれぞれ慎重な審査を行なった。
その結果、FTCがまず2000年12月14日、条件付きで両社の合併を承認。条件とは、1. ケーブルシステムを競合するISPにも開放する、2. 他のISPやインテラクティブTVサービスが配信するコンテンツを妨害しない、3. AOLタイム・ワーナーのISPサービスやインテラクティブTVサービスの配信について他のケーブル会社と排他的な合意をしない、4. AOLのDSLサービスをAOLタイム・ワーナーがケーブル・ブロードバンド・サービスを提供している地域か否かに関わらず平等に提供する、などであった。
またFCCも2001年1月11日、AOLのIM(インスタント・メッセージング)技術についてタイム・ワーナーのCATV回線を使ってビデオのやりとりなど高度な利用をする場合には競合他社にも回線を利用させる、などの条件を付けて合併を承認した。
この結果、インターネット、テレビ、出版、映画などを傘下に抱える世界最大の総合メディア企業AOLタイム・ワーナーが誕生したのである。
こうして誕生したAOLタイム・ワーナーの今後の事業戦略は、DSL、ケーブルなどのブロードバンド事業のみならず、コンテンツなども含めたメディア・ビジネス界全体に大きな影響を与えることは必至である。
また、ブロードバンドでAOLタイム・ワーナーに対抗するAT&Tも、既に1999年に大手CATV事業者のテレコミュニケーションズ(TCI)を買収して総合通信サービス・プロバイダとして名乗りをあげ、@Homeやメディア・ワンの買収によって着々と地歩を固めてきた。しかし、長距離電話サービスの収益悪化を踏まえ、AT&Tは2000年10月に、同社をワイヤレス、ブロードバンド、消費者向け長距離電話、企業向けネットワーキングの4事業部門に分割しそれぞれをAT&Tブランドの下で協力しながらも独立した形で運営する改革計画を発表している。この改革は2002年中に完了するということであるが、やはりブロードバンド事業にどのような影響が出てくるのかが注目される。
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