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2002年4月 JEITA ニューヨーク駐在・・・荒田 良平
「米国におけるB2B電子商取引の動向」(その2) |
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i2テクノロジーズ(i2 Technologies, Inc.) 〜 各種業務(調達、SCM、CRMなど)管理ソフトウェアおよびシステムの提供
<企業プロファイル>
■所在地: テキサス州ダラス ■URL: http://www.i2.com ■設立: 1988年 ■最高経営責任者: Gregory Brady社長兼務 ■企業形態:上場(NASDAQ : ITWO) <業界背景と沿革>
i2テクノロジーズ(以下i2)は、米国内インド人技術者パワーを示す実例そのものと言える。半導体大手テキサス・インスツルメンツ(TI)に化学工学技術者として勤務していたサンジブ・シドゥ現会長は、自宅で開発したサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)技術を掲げて、1988年にi2を設立した。その後ベンチャー・キャピタリストたちからの投資案も出たが同氏はそれを拒み、1992年にソフトウェア再販業者に独自の商品を売り込んだことで全米各地にソフトウェアが流通することになった。 i2は当初、製造業者のためのSCMソフトウェアであるMRP(Manufacturing Resource Planning)の供給でニッチ市場を形成していた。MRPは、原材料の仕入れから生産、そして出荷にともなう一連の過程の効率化を目的としており、当時製造工場の効率化に努めていたメーカー大手から一気に注目を集めるようになった。90年代初期にはオーストラリアやドイツ、日本、イギリスに輸出し、1996年に新規株式公開(IPO)を果たしてからは、数々のIT企業を買収しソフトウェア技術の開発力を高めていった。
規模拡大にともない、i2は従来のSCMソフトウェア専門メーカーからEコマースへと事業戦略を移行させた。同時に、eプロキュアメント(オンライン調達)やコンテンツ管理(CMP)、CRM(顧客管理)といった各種機能をSCMソフトウェアに組み込み込んでいった。そして1998年、半導体大手モトローラの半導体製造部門を顧客にしていたリズム(RHYTHM)とSCMソフトウェア供給で3年間1,750万ドルの契約を成立させ、業界最大手の座を確固たるものにした。同年、i2は日本市場向けSCMソフトウェアの開発でオラクルと業務提携している。 i2は2000年、アリバ(Ariba)およびIBMと業務提携し、eマーケットプレイス構築を含む統合調達システムを提供し、さらなる急成長を遂げた。i2は同年、年商10億ドルを初めて超えている。しかし、i2が2001年にeマーケットプレイスを提供し、アリバの直接競合だったライトワークス(RightWorks)を買収したことから関係が微妙になっている。しかし、i2の商品はコマースワン(Commerce One)やアリバの製品に比べて、包括的なソリューションを提供できることから、オラクルやピープルソフト、SAPがむしろ直接競合となっている。
i2は現在、顧客に独半導体大手シーメンス(Siemes)、ゼネラル・エレクトリック(GE)、コカコーラといった世界的企業を抱えている。i2の2000年売り上げは、前年比97.2%増の11億2,630万ドルである。従業員は約6,000人いたが、2001年になって約25%を解雇する計画を発表しており、インターネット経済後退によって経費削減に追われている。
<ビジネス・モデル>
i2の収入源は、1)ライセンス料、2)サービス、3)メンテナンス、の3部門で構成される。i2は、およそ企業が運営に当たって必要とする諸業務を全て網羅する様々なソフトウェアを提供しており、各種業界向けに提供するソフトウェアのライセンス料が同社の収入源となる。これに附随して、商品納入の際のコンサルティング業務と顧客教育からなるサービス料、そして技術サポートやソフトウェアの更新によるメンテナンス費用が企業から支払われることになる。
ライセンス収入源となる代表的ソフトウェアには、「i2SCM」と「i2 サプライヤー・リレーションシップ・マネジメント(SRM)」の2つがある。 i2 SCMは、生産計画と需給計画を管理することで在庫を最小限に維持できるようにする。原材料の仕入れや生産量、需要予測と生産計画、さらには出荷に関する過去の記録が保存されており、SCM責任者は同ソフトウェアを利用することで、安全に意志決定を下すことができるようになる。また、SCM責任者の端末と工場および流通センターを同ソフトウェアでつなぐことによって、リアルタイムでの生産計画指示ならびに配送指示を行うことができる。 i2 SRMでは、調達、製品開発、そして運営という3つの分野で売り手と買い手の両方のコスト削減を実現する。調達側(買い手)に提供されるソフトウェアでは、過去の発注記録が商品種、商品名、支払額といったあらゆる付随情報で保存され、また複数の売り手の電子カタログを検索することが可能となっている。さらに、決まった取引先とはエンド・ツー・エンドの調達周期をウェブ上で管理できるようになっている。一方、供給側(売り手)の場合、調達に対応する機能がSCMソフトウェアに組み込まれており、それが買い手と連動する。i2ではそれを「i2 サプライ・コラボレーション・ソリューション」と呼んでおり、売り手と買い手が需要の見通しに関する諸情報と在庫情報を共有できるようにした。
i2はその他、「i2 CRM」「トレードマトリクス・オープン・コマース・ネットワーク(TradeMatrix Open Commerce Network)」という2つの主要ソフトウェア商品を提供する。i2 CRMは、例えば、効果的な時期に効果的なマーケティングを実施できるよう顧客のお客の購買動向を管理することで、SCMの調整を助ける。それに対してトレードマトリクスOCNでは、i2 SCMやi2 SRM、あるいはi2 CRMを導入しているi2の顧客が取引先やeマーケットプレイスと情報を電子的に交換する場合に、顧客の取引先のフォーマットや環境に対応できるようアプリケーションを翻訳する。
i2は2000年、これら主要ソフトウェアのライセンス収入が総売り上げの63%を占めた。同年、サービス部門の売り上げは全体の24%、メンテナンス部門での売り上げは13%だった。2001年上半期をみると、サービス部門とメンテナンス部門の売り上げの占める割合が高くなっている。
<中核的競争力とその特色>
業界分析家たちは、B2B向けeソリューションに関してi2が最も包括的な商品を揃えていると評価しており、それに基づく信頼が最大の武器となっている。同社のソフトウェア・ツールは50種類以上あり、またほとんどの産業界に浸透している。それらのソリューションは、分析機能が充実しており、例えばi2 SCMを例にとると、担当者が仮に、北米市場の需要を10%増と想定した場合、それが売上げをどれほど伸ばし、そのためにはサプライ・チェーンをどのように管理すべきかをグラフや表に表示できる。 さらに、i2の商品はモジュール化されているのが特徴で、例えば、i2 SRMの場合、アウトソース管理というモジュールを組み込むことによって、下請け企業に対する需要や原材料仕入れ額を監視することも可能となる。それによって下請けに発注した際にうやむやになってしまう調達状況をより正確に把握できるようになる。その他、i2契約ソリューションとモジュールは契約内容を管理するもので、サプライ・チェーンや調達計画に関する需要見通しと生産計画の変更が記録されると、それに関係してくる契約を探知して警告する。i2にはそういったモジュールがいくつもあり、顧客の必要性に応じていくらでもカスタマイズできる。
一方、i2は、組織的な販売力が強いと評価されている。もともと独自の販売力も強い上に、一連の大手経営コンサルティングをはじめ、eビジネス大手(例えばIBM)と業務提携することにより、ネットワーク基盤を確立している。特にキャップ・ジェミニ・アーンスト&ヤングとの提携では、i2のウェブ・ベースのソフトウェアを同社が一手に引き受けてシステム・インテグレーションする。ちょうど、コマースワンとSAPが強い提携関係により、販促を狙っているのと同じ戦略と言える。業界ではi2連合とコマースワン/SAPという競合構図が指摘されている。
i2は、大企業を顧客に抱える主要ベンダーやコンサルティング会社との関係がインターネット時代以前からあったため、プライベート・エクスチェンジ市場への浸透力がある。コビシント(Covisint)のように、業界が支援するコンソーシアムではコマースワンが依然として強いが、企業が立ち上げるプライベート・マーケットプレイスではi2が優勢である。i2のソフトウェアを利用する企業は1,000社にのぼり、それらの企業が削減したコストは160億ドルにのぼる。例えば、3年前に同社のシステムを導入したパナソニックは、納品遅延の85%を改良し、3年以内に12億ドル以上の在庫コストを削減できるとみている。
<課題>
米経済の鈍化によってeマーケットプレイスの起業件数が激減したことは、市場規模の縮小を意味し、さらに潜在的企業のIT予算が縮小されたことで、i2も打撃を受けている。例えば、ライセンス販売件数だけをみると、2001年の上半期合計が189件で、前年の78件と166件を上回っているものの、ライセンス契約内容が大幅に縮小している。2001上半期の平均ライセンス額は1件あたり150万ドルで、前年から減少となった。25%の人員整理を強いられているのも、受注規模の大幅縮小が原因である。
<今後の方向性>
市場の縮小のためリストラ策を進めることを余儀なくされているi2であるが、今後は、SCMとSRMソフトウェア商品によって、顧客企業の大幅コスト削減を実現させることで顧客数の増大を図ることを当面の目標にしている。それと同時に外国市場への進出もこれまで以上に進める計画である。同社の2000年における地域別売上げは、北米が7億3,300万ドルで全体の65%を占め、EMEA(中東および一部のアフリカ諸国)が20%、アジア・太平洋が11%、そしてその他の地域が4%となっている。
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