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2002年6月 JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平
「米国におけるバイオ・インフォマティックスの動向」 |
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ユーザー業界の動向 〜 バイオテクノロジー 次に、バイオテクノロジー業界についてであるが、バイオテクノロジー産業協会(http://www.bio.org/)によると、同業界の2000年の企業数は1,379社、総収入は250億ドルで、研究開発費を138億ドル支出しているという研究開発型産業である。(図表7) ![]() (出展: Biotechnology Industry Organization) 図表7を見ると、バイオテクノロジー業界は順調に成長を続けていることが伺えるが、さすがに2000年は“バブル”だったようで、Signals誌(http://www.signalsmag.com/)によると、同業界が調達した資金は2000年に314億ドルにのぼり、その6割が株式市場から調達されたという。バイオテクノロジー産業協会(http://www.bio.org/)によると、2001年における資金調達状況は図表8のとおり総額150億ドル強で、株式市場の低迷を受けてIPO(新規株式公開)が非常に少なくなっている一方で、ベンチャーキャピタルから全体の25%に相当する38億ドルを調達している。 ![]() 図表8 バイオテクノロジー業界の資金調達先(2001年) (出展: Biotechnology Industry Organization) ![]() (出展: PricewaterhouseCoopers/Venture Economics/ National Venture Capital Association) なお、図表9は米国ベンチャーキャピタル協会(http://www.nvca.org/)他によるベンチャーキャピタルの投資動向であるが、株式市場の低迷を受けてベンチャー投資額が2000年第1四半期をピークに大きく落ち込む中で、バイオテクノロジーへの投資は比較的堅調であり、2001年合計でバイオテクノロジー30億ドル、医療機器設備を加えると50億ドルを超える投資がこの業界に投じられている。 バイオテクノロジー業界のようなベンチャー比率の高い業界では、多様な資金調達手段の確保のため株式市場の活性化が不可欠である。ドットコムや通信に比べると株価崩壊の影響は少なかったとはいえ、やはり図表10に見られるように2000年をピークとした株価低落傾向は続いており、バイオテクノロジー業界は、将来性の大きい業界であることは間違いないものの、一層厳しい選別の時代を迎えていると言えるであろう。 図表10 NASDAQ指数(バイオテクノロジー)(5/10/1999〜5/8/2002) ![]() (4)
ユーザー業界の動向 〜 基礎研究 最後に、バイオ・インフォマティックスに関する基礎研究の動向について触れておこう。 米国におけるライフサイエンス関連の基礎研究費の太宗は国立衛生研究所(NIH)の予算として支出されている。図表11からわかるように、近年NIHのR&D予算は非軍事R&D予算の中で突出して急増しており、2002年度のR&D予算は対前年度比15.8%増の228億ドルに達している。 景気後退やテロリズム対策のための財政支出増の影響で、米国の財政収支が急速に悪化する中で、今後もR&D予算拡大のトレンドが続くことが許容されるのかについては予断を許さない。またライフサイエンス以外の分野の研究者から「もっと分野別バランスの取れたR&D予算を組むべきだ」との声が強いのも確かである。しかし、こうした点を考慮に入れたとしても、今後も引き続きライフサイエンス関連のR&D予算が非常に重視されることは間違いなく、その中でバイオ・インフォマティックスをはじめバイオIT関連分野にも相当の予算が回ってきそうである。 ![]() (出展: AAAS) |
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