98年1月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

97年の回顧と98年の展望 -6-


2.インターネットとエレクトロニック・コマース

(1)拡大を続けるインターネット

 インターネットについて、97年を総括し98年を展望するのは簡単と言えば簡単である。すなわち、97年も爆発的に拡大し、98年もそうだろうということである。これではあまりに無責任であるが、定量的にはIDCが12月15日に示した予測の中で言うように、「大衆化の時代(It's reaching mass-market proportions)」に入ってきているのかもしれない。同予測では米国の家庭のインターネットへの接続率は、96年末で13%、97年末で18%(1,770万世帯)、98年末では25%、2001年には38%(4,000万世帯)になろうという。データクエストの8月の推計では、世界のインターネット接続PC数は97年末に8,700万台、2001年には2億6,800万台になるという。いろいろな数字が発表されているので、それらをいくら上げてもきりがないが、要はまだまだ拡大していくということである。

 この拡大を支えるだけのキャパシティーがあるのだろうかというのが、心配されてきたところであるが、今のところは問題なく進んでいる。次の世代のインターネットであるインターネット2(NSFネットの後継)とNGI(Next Generation Internet)はどちらもこれから5年先を目指した計画である。従って、現世代のインターネットにさらに投資が続けられることになる。しかし、そのネットワークへの投資経費が賄えずに伝統的な大手のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)が次々と店をたたまなければならなくなっていることに注視しておく必要があろう。UUネットテクノロジーズ社(バージニア州)は96年8月に地域電話会社のMFSコミュニケーションズ社(ネブラスカ州)に、そのMFS社自身96年12月に長距離通信大手のワールドコム社に、BBN社は97年8月に地域電話大手のGTE社に、アメリカ・オンライン社のネットワーク部門であるANS社が97年9月にワールドコム社に、老舗プロバイダーとして最大だったネットコム社(カリフォルニア州)は97年10月に地域電話会社のICGコミュニケーションズ社(コロラド州)にそれぞれ買収された。

 極めつけは、11月10日、ワールドコム社(長距離通信4位)とMCIコミュニケーションズ社(同2位)が、両社の合併について合意に達したと発表したことである。MCIは元々NSFネットの時代からその運営を行ってきた老舗ISPでもある。従って、この買収によって誕生する新会社「MCIワールドコム」は、インターネット界の巨人となるのである。

 こう見ると、ISPが次から次へと倒れ、どうなってしまうのかという感じもするが実際にはそうではない。逆に苦しかったISPも、資本力ある電話会社に吸収されることで、投資は拡大し、これらの吸収合併はインターネットにとってはポジティブなものであったと捉えることができるのである。現に例えばUUネットがワールドコムに合併された際に、3億ドルのネットワーク投資が行われ、今やOC-12(622Mbps)網が、ニューヨーク、ワシントン、ボストン、シカゴ、アトランタ、ヒューストン、ダラス、サンフランシスコ、ロサンゼルス間で張り巡らされ、そのバックボーンは最強のものとなっている。

 ISPの中でも直接ユーザーにオンライン・サービスを提供しているプロバイダーについても、その競争は激化している。アメリカ・オンライン(AOL)が9月にコンピュサーブを実質的に買収しているが、これによりAOLは11月17日、会員数が1000万人を突破し、7-9月期の業績も大きく回復したとしている(残念ながら投資は追いついていないらしく、その数日後もメールが使えなくなったりしている)。しかし、現在米国に4500もあるといわれている中小のオンライン・サービス・プロバイダーの経営は楽ではなく、データクエストによれば、今後5年以内に400〜500にまで淘汰されていくだろうという。これらISPに身を置かれている人たち、あるいはこれらのユーザーの方たちには申し訳ないが、これらの一連の動きはインターネットを益々強固なものにしていくために避けられない一つの過程なのだろう。

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