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98年1月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
97年の回顧と98年の展望 -5- |
さて、一寸長くなったが、本稿執筆時点では以上のところまで進んでいる。これについて、私が裁判官に代わって判断を下すわけにもいかないので、一般に言われている論調を踏まえた私の感想だけ少し記してみたい。どうだろうか。やはり、誰が見てもマイクロソフトのやり方は強引過ぎるように見えるのではないか。ブラウザ・ソフトのインターネット・ブラウジング機能のみを使っているならば、インターネット・エクスプローラーだろうが、ネットスケープ・ナビゲーター/コミュニケーターだろうがあまり差はない。ネットスケープ社も無料で配布することを考えているくらいであり、ネットスケープ社の売上高に占める割合もかなり減ってきて18%程度だという。しかし、ブラウザはインターネットという外の世界に開かれているドアというだけではない。両社にとって重要なのは当然のことながら。このブラウザのドアを通って内側に開かれた部分、すなわちイントラネットやグループウェアのソフトウェアに導くことができるという点なのである。イントラネットは一時期ほど米国では騒がれなくなっているが、コンピュータ・インテリジェンス社によれば、米国では従業員500人以上の企業の20%近くが98年の7月までにイントラネットを導入すると言っている。マイクロソフトにとってみれば、いつまでもネットスケープの方のドアを大きく開けておくと、マイクロソフトの宿敵であるサン、オラクル、ネットスケープ、IBM、ノベルといったJava軍団の方に、これからイントラネットやグループウェアを導入しようという顧客が流れていってしまうことになる。従って、やや強引にもバンドル戦術をとり、さらにはウィンドウズへの統合戦術をとるというのは当然のことなのかもしれない。ネットスケープもやって来ていることであるから。 しかし、ウィンドウズ95の段階でここまでやる必要があったのか。ウィンドウズ97のはずが98になり、かつその出荷も98年第2四半期の終わりということで遅れたことが、マイクロソフトを焦らせる原因になったのだろうか。ウィンドウズ98でもっと高次の機能レベルにおいてブラウザがOSに統合されていくのなら、「統合(integrated)」という言葉も自然であろうが、ウィンドウズ95に追加的にダウンロードをしてきて、機能が「統合」されたと言うのはやや無理があったのではないか。ここまで統合にこだわらなくてもIE4.0のシェアは徐々に上がっていっただろうし、ウィンドウズ98で統合されてしまえば、そこで勝負はついたはずである。もちろん、ウィンドウズ95から98に皆が乗り換えるわけではないだろうが、少なくともまだウィンドウズ95ユーザーと同じぐらいの数が残っているとされる3.1ユーザーが95を飛び越えて98に乗り換えるのは確実だろう。3.1ユーザーのためにマイクロソフトは98の出荷を遅らせるとまで言ったのだから。もちろん、それでは遅い、イントラネット等の市場で大きな遅れを取ってしまうということもあるのだろうが、そちらは来年ぐらいで勝負がつくものでもなく、OSの独占状態と、ウィンドウズNTサーバーの一方での独占的な伸びがあるのだから挽回もできるわけである。いずれにしても、もう少し慎重に「統合」に取り組むべきではなかったのかというのが私の感想である。 さて、来年のPC市場を占う上で最も大きな関心事は、これらの訴訟がウィンドウズ98にどのような影響を与えるのかというところであろう。今のところ、マイクロソフトは来年第2四半期末(6月ということか)に予定しているウィンドウズ98の出荷に何の影響もないとしている。しかし、ジャクソン判事の裁定の中に「OS(including Windows 95 or any successor version thereof)」と記されており、司法省も当然98もブラウザはバンドルしてはいけないと解釈できるとしている。マイクロソフトも上述の12月15日付けの上訴書の中で、ウィンドウズ98への影響は米国経済にも大きな影響を与える問題として、ジャクソン判事の仮裁定を批判している。つまり、このままでは何らかの影響は免れないであろうし、レッシング教授の報告が5月31日までということは、6月にそれとは関係なく出荷を決行するというのはマイクロソフトにとっても難しいことであろう。いずれにしても、今後の裁判の成り行きによるところであり、ここでどうこう予測をしても仕方がないので、これ以上述べることはやめよう。ただ、いみじくもマイクロソフトのビル・ゲイツ氏も「私がパソコンを好きな10の理由」をCOMDEXの基調講演で述べていたように、現在のPCでももっともっと良い使い道はあるのであり、それだけでもPCの需要は拡大できるはずである。少なくとも(日本の(失礼!))PCメーカーも販売店も、ウィンドウズ98頼みだけで来年の需要喚起を狙うのはやめるべきだろう。
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