98年4月  JEIDA駐在員・・・長谷川英一

米国産業におけるIT活用の動向(後半) -4-


事例(3)
チャールズ・シュワブ(Charles Schwab & Company)
 大手ディスカウント株式ブローカー。本社カリフォルニア州サンフランシスコ。97年営業収入23億ドル。取扱資産総額3,830 億ドル。(IT予算非公開)

ITプロジェクト:オンライン株式取引システム(現在構築中)

推定コスト:非公開

技術内容
 同社は、アリゾナ州フェニックス、サンフランシスコの2拠点に置かれた日立製メインフレームを使用して、株式取引処理ソフトウェア「顧客情報管理システム(CICS)」を運用し、情報をIBMのDB2データベースに保存していた。今回のプロジェクトでは、この旧式システムを、IBMのRS/6000サーバ32基とDB2/AIXデータベース・プログラムにリンクしている。

 RS/6000サーバを使って提供されるウェブ取引サービスは、45MbpsのT-3回線2本でインターネットに接続されており、インターネット・エクスプローラとコミュニケータのいずれを使ってもアクセスできる。このサーバは、基本ソフトにUNIXベースのAIXを使用し、サーバ・ソフトにはネットスケープの「エンタープライズ・サーバ」を使用。ウェブ・サーバと株式取引サーバの間は、SNAネットワークで接続される。また、ウェブ情報コンテンツのホストには、サンのワークステーションを使用。

プロジェクト概要
 チャールズ・シュワブのシステムは、顧客がウェブを使ってアクセスすることができ、自己資産の推移を調べたり、資金を口座間で移動したり、株式を売買したりといった利用が可能である。その他にも、市場の金融商品(ミューチュアル・ファンド)を比較したり、特定銘柄の株式に関する調査をしたり、退職後に向けた財産形成のプランニングをしたりするための付加価値アプリケーションが利用できる。

主な成果
 97年末までに、同社は120万口のオンライン顧客を集めている。これは、総顧客数440万口と比較すると、かなり高い比率であるということができる。オンライン顧客の投資額合計は、800億ドルである。97年の第4四半期、同社の取扱った取引総額のうち、41%がオンライン上で行われ、前年同期の28%を大きく上回った。同社は、ウェブ上で行われた取引の件数を公表していないが、同社は、現在進めているアップデートにより、システムの最大容量をこれまでの2.5〜4倍にする計画を立てている。

実施企業及び顧客へのメリット
 チャールズ・シュワブが推進しているオンライン化の最大のメリットは、顧客にとってのアクセスと利用が容易になったことであり、このことは、同社のシェア拡大にも寄与している。調査機関のフォレスター・リサーチによると、現在のオンライン株式取引市場のうち、同社は50%以上を占めているという。同社のウェブ取引システムは、キップリンガー・パーソナル・ファイナンス(Kiplinger's Personal Finance)やスマートマネー(SmartMoney)といった個人資産管理専門誌で「最も信頼性が高く、行き届いたオンライン取引システム」にランクされており、他社との差別化に貢献している。さらに、オンライン取引の経費は、支店社員を通じた電話取引に比べて非常に割安なため、オンライン・システムの利用増加は、同社の操業コストを引き下げる作用ももたらしている。

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