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98年4月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
米国産業におけるIT活用の動向(後半) -8- |
(4)その他サービス業 これまで紹介した以外にも、近年ITを積極的に活用して目ざましい効果を上げている企業は多い。以下、サービスセクターの中から、IT活用の戦略的重要性が高いとされているリテール、輸送、専門サービスの3業種を例に、事業者の動向を見てみる。 A.リテール業界 リテール業界においては、EDIをはじめとするネットワーク技術を活用して業務の合理化と低コスト化を実現したウォルマート(Wal-Mart)の成功事例などが刺激となり、ITへの関心が非常に高い。ウォルマートは、短期間に米国最大のリテール事業者へと成長し、現在、年商1,000億ドルの超大型企業となっている。同社が作り出した新しいトレンドは、いまや多くのリテール事業者の追随するところとなっており、業界全体のIT投資を急速に押し上げている。物価上昇率の影響を除外しても、IT投資額は80年の46億ドルから89年の106億ドルへと、倍以上の伸びを見せている(数字は82年の物価に換算したベース)。アーンスト・アンド・ヤングが行った最近の調査でも、リテール事業者は平均して年間売上高の0.74%をIT投資に充てている。 この業界において、最も盛んな投資が行われているIT分野は、1. 販売時点管理(POS)システム、及び2. 仕入先などのサプライ・チェーン網を結ぶ電子リンクの2つである。さらに、上記2種類のシステムは、バーコード技術の登場によって相互にリンクされ、入荷から販売までの商品の動きを追跡するシステムが整備されつつある。その他の良く見られるITアプリケーションとしては、店頭陳列・ディスプレイの決定に使われるCAD技術、売れ行きの傾向と仕入需要予測のためのデータ・ウェアハウジング、データ・マイニング技術、顧客を対象とした電話注文受付センター(特にカタログ販売事業者)などがある。 今後しばらくは、リテール事業者によるPOSシステム更新投資が盛んになると予想されている。全米リテール連盟(National Retail Federation)によると、現在国内で使用されているPOSシステムは、ほとんどが88年から92年の間に導入されたものであると言い、設計時に想定された耐用年数の10年がそろそろ終ろうとしているからである。これ以外でリテール業界と関連が深いIT分野は、2000年対策(クレジットカードの有効期限などで未対応の端末がまだ多く出回っている)、データ・ウェアハウジング、サプライ・チェーン管理、ウェブ販売などである。
ITプロジェクト:加盟店から本部のメインフレームにある基幹アプリケーションに直接アクセスできるようにするエクストラネット・システム、「エースネット(Acenet)2000」(97年4月導入開始、完成予定99年下期) 推定コスト:3年間で合計2,400万ドル
技術内容:
プロジェクト概要:
主な成果、実施企業及び顧客へのメリット: エース・ハードウェアは、エースネットからは投資の3倍に相当する効果が上がると見込んでいる。また、利用店の側でも、イントラネットを経由してきめ細かく参考情報にアクセスできるようになったことで、より効果的な店舗運営が可能になっている。エースネットが、ウェブ・ブラウザを基礎にしたユーザー・フレンドリーなインターフェースを持っていることも、利用店の間で好評である。
ITプロジェクト:オンライン販売アウトレットと社内情報システムの機能を融合したウェブサイト(97年10月完成) 推定コスト:非公開
技術内容:
プロジェクト概要:
主な成果、実施企業及び顧客へのメリット: 同社の従業員数は45人で、これはウェブサイトの導入前と変わらないが、スタッフ1人あたりの売上高が、以前と比べて大きく伸びている。 同社は、ウェブサイト構築の過程で話し合いを行った仕入先業者との協力により、98年中にエクストラネットを使ったサプライ・チェーン管理システムを開始する予定。
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