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2002年8月 JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平
「米国におけるワイヤレス市場の動向」(その2) |
5.
米国のワイヤレスLAN市場の動向 (1)
IEEE802.11bの普及 最後に、ワイヤレス市場をめぐり最近最もホットな話題であるワイヤレスLANを取り上げておこう。ワイヤレスLANは、従来は主に企業内で利用されてきたが、この1〜2年の間に家庭内および「ホットスポット(HotSpot)」と呼ばれるホテルや空港・商店などでも利用されるようになり、その市場が大きく成長し始めている。 ワイヤレスLANは、1999年に米国電気電子学会(IEEE)が2.4GHz帯で伝送速度11Mbpsを実現する標準規格IEEE802.11bを策定してから急速に普及してきた。また、802.11bに準拠する製品の相互接続性を業界団体WECA(Wireless Ethernet Compatibility Alliance)(http://www.weca.net/)が確認し、認定製品に「Wi-Fi」(Wireless Fidelityの略)マークを付与することで消費者に安心感を与えたこと、AppleがノートPC「iBook」向けのワイヤレスLANシステム「AirPort」(日本では商標権の関係で「AirMac」)をヒットさせたことなども、普及の要因となっている。もちろん、ワイヤレスLAN関連機器の価格が大幅に下がったことも見逃すことはできないであろう。 なお、802.11bよりも高速のワイヤレスLAN規格として、5GHz帯で伝送速度54Mbpsを実現するIEEE802.11aも策定されている。2002年7月に入ってWECAが802.11a製品についても認定活動を始めたことも発表されており、今後の普及が期待される。 調査会社IDC(http://www.idc.com/)によれば、ワイヤレスLAN関連機器の売上は2001年に14億5,000万ドルに達し、2000年から34.2%の伸びを示したという。また同社は、2006年には37億7,200万ドルの売上規模に達するだろうと予測している。
(出典: IDC) このような急激な伸びを示す要因として、IDCは1.教育や小売関係での利用の増加、2.空港やホテルにおけるワイヤレスLANの敷設と利用、3.自宅やSOHOオフィスでのホーム・ネットワーキング利用、4. 5GHz製品(802.11a等)の導入、の4つを挙げている。 また、これとは別に、カリフォルニア州に本拠をおくマーケットリサーチ会社のDell’Oro Group Inc.(http://www.delloro.com/)は、802.11b関連機器の売上は2001年に倍増して12億ドルに達し、2002年にはさらに35%の成長が見込めるとしている。また、2002年第1四半期には、802.11aも含めたワイヤレス関連機器の売上は前期比3%減となったものの、企業向け市場が季節的要因で前期比16%減となる一方で、SOHO向け市場が10%の伸びを示したという。 図表3 ワイヤレスLAN関連機器の売上高 (注)2001年1Q〜3Qは802.11b関連機器のみ。2001年4Q以降は802.11a関連機器を含む。
Dell’Oro Groupによれば、ワイヤレスLANが最も活用されている業界は、製造業、流通、ヘルスケア、大学関係であるという。ワイヤレスLAN関連機器メーカーのProximは、「そうした企業・学校では、ワイヤレスLANを従来のLANと置きかえるのではなく、既存のLANの拡張として導入している」という。また、Cisco Systemsは、会議室やトレーニング・センター、支社などでワイヤレスALNが導入されており、教育関連市場でのワイヤレスLAN利用が増加しつつあるとしている。 ワイヤレスLANのサービスプロバイダとしては、Wayport Inc.、VoiceStream、Boingo Wireless Inc.、Joltage Networksなどが挙げられる。 1.
Wayport Inc.(http://www.wayport.com/) Wayportは、テキサス州オースティンに本拠をおく、1996年に設立されたホットスポット・サービス提供の老舗である。空港やホテルの公共スペースではワイヤレスLANサービスを、また空港の専用スペースやホテルの部屋では有線のLANサービスを提供しており、利用料金は年契約で月々定額29.95ドル、月契約で月額49.95ドルである。現在、全米の450軒のホテル10万室でWayportのサービスを利用できる。 2.
VoiceStream(http://www.voicestream.com/) VoiceStreamは、倒産した米国のワイヤレスLANプロバイダであるMobileStarを買収し、MobileStarとVoiceStream Wirelessブランドを統合、T-Mobileの名称でワイヤレスLANサービスの提供を開始する予定である。現在は、MobileStarが所有・運営していたスターバックス500店舗を含む650か所のホットスポットを通じてワイヤレスLANサービスを継続しており、ホットスポット数は2003年までに約2,000か所まで増やすとしている。 GPRS/Wi-Fi両用のハイブリッドPCカードを提供し、VoiceStreamのGPRS網内で約100Kbpsのデータ通信サービスを利用するユーザーが、空港・ホテルなどに敷設されたMobileStarのWi-Fiカバレッジに移動すると約10Mbpsの高速インターネット・アクセスが可能になるというサービスが予定されており、これがVoiceStreamのワイヤレスLANサービスの大きな特徴となる。 3.
Boingo Wireless Inc.(http://www.boingo.com/) Boingoは、大手ISPのEarthLinkの創設者であるSky Dayton氏の発案のもとに設立されたワイヤレス・インターネット・サービス・プロバイダである。同社への出資者にはSprintPCSが含まれている。自前のワイヤレス・ネットワーク・インフラは有しておらず、上記のWayportのほか、Surf and Sip、Nomadix、RoomLinx、Air2Lan、Pacific Direct Connect、hereUare、AirPathなどのワイヤレスLANプロバイダと提携し、それらのWi-Fiネットワークを統合してBoingoのブランド名のもとで、月額使い放題の74.95ドルでワイヤレスLANサービスを提供している。現在、全米約800か所のホットスポットを持ち、2002年末までに5,000か所までに増やす予定である。 4.
Joltage Networks(http://www.joltage.com/) Joltageは、ニューヨークに本拠をおく、フランチャイズ方式によるワイヤレスLANサービスを提供するプロバイダである。個人や商店に無料でホットスポット開設用ソフトウェアを提供し、Joltageのブランド名で営業することを許可するフランチャイズ方式を採用している。ホットスポット開設を希望する個人や商店は、自前でワイヤレスLAN関連機器や通信回線を用意し、無料提供を受けたソフトウェアを利用してホットスポットを運営する。Joltageとしてのマーケティングや、加入者への請求事務はJoltageが担当し、ホットスポット運営者は売上の一部をJoltageにフランチャイズ・フィーとして支払う仕組みである。利用者は月額24.99ドルで60時間利用でき、500MBまでダウンロードが可能である。時間ごとで利用したい場合は、1時間1ドル99セント、その後は15分ごとに追加料金を支払うサービス形態である。 (4)
ホットスポット集積都市トップ15 ここで、2002年3月のWireless Week(http://www.wirelessweek.com/)に掲載された、hereUare(http://www.hereuare.com/)調べの米国ホットスポット集積都市トップ15を図表4に示しておこう。 この調査によると、ホットスポット数が最も多いのはサンフランシスコ(257)で、以下シアトル(154)、ニューヨーク(107)、ダラス(105)と続く。ただし、ホットスポットはどんどん増えていると言われるので、現時点で既にこの序列が変わってしまっている可能性があることは言うまでもない。 ![]() 図表 (出展: Wireless Week) なお、hereUareは2002年3月に、公共のホットスポットの内訳も公表している。これによると、公共のホットスポット全体のうち55%はカフェ・レストランで、スターバックスの539ヶ所が最多、またホテルは全体の38%、空港は全体の6%であるという。 図表5 公共のホットスポットの内訳
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