2002年11月  JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平

「米国におけるITSの動向」(その1


図表9 10年計画の概要

ビジョン

Ø                  将来の運輸システムは、年齢、運動能力、場所によらず継ぎ目のないエンド・ツー・エンドのインターモーダルな人の移動と、効率的で継ぎ目のないエンド・ツー・エンドのインターモーダルな貨物の移動を実現すべく管理運用される。

Ø                  政策決定者と民間の意思決定者は、21世紀の運輸システムのビジョンを達成するために不可欠なものとしてITSを活用する。

Ø                  将来の運輸システムは、コンピューティング、通信及びセンサ技術から総合的に得られる情報によって、安全で、利用者中心の、成果を重視した、制度上も革新的なものとなる。

目標

1.             安全

2011年までに運輸関連の死亡者数を15%減らし、年間5,0007,000人の命を救う。

2.             セキュリティ

運輸システムを攻撃から守られ、自然や人的な脅威や災害に効果的に対応できるものにすることによって、有事においても人や物資の移動を可能とする。

3.             効率/経済性

より良い情報、より良いシステム管理、及び、迅速で継ぎ目のないインターモーダルな公共交通を含む効率的でエンド・ツー・エンドの人と物資の移動の実現による渋滞の抑制により流量と容量を増大させることによって、少なくとも年間200億ドルを節約する。

4.             移動度/アクセス

運輸システムの利用者が継ぎ目のないエンド・ツー・エンドの移動手段を選択できるように、どこでも情報が得られるようにする。

5.             エネルギー/環境

少なくとも年間10億ガロンのガソリンを節約し、少なくともこれに比例する排ガスを削減する。

計画上の課題

1.             運輸情報の総合ネットワーク

人の継ぎ目のない移動

貨物の継ぎ目のない移動

気象状況による影響

緊急事態と危機への対応

総合ネットワークの構築

2.             先進的衝突防止技術

車載エレクトロニクス、路車間協調、インフラ技術

運転者の資質

自動取締り

3.             自動的な衝突・事故の検知・通報・対応

4.             先進的運輸管理

先進的運輸管理システム

先進的自動運輸システム

実現のための課題

1.             運輸システムの管理運用の文化

2.             公的部門の役割、関係、資金確保

3.             民間部門の製品開発促進のための連邦政府の政策・インセンティブ

4.             人的要素

(出展: ITS AmericaNational ITS Program Plan: A Ten-Year Vision」より作成)

さらに、ITS America2001911日のテロ事件を受けて、20029月に上記の10年計画への補足追加という形で、図表10に示すように「Homeland Security and ITS」(http://www.itsa.org/resources.nsf/Files/PPRA_Security_Final/$file/PPRA_Security_Final.pdf)というビジョンを発表している。これは、具体的には10年計画における「計画上の課題」に5番目の課題として「国土安全保障」を追加するとともに、ITSは国土安全保障のためどのような貢献ができるかを整理したものである。

図表10 Homeland Security and ITS」の概要

ITSは国土安全保障のためどのような貢献ができるか

1.             準備

2.             予防

3.             保護

4.             対応

5.             復旧

計画上の課題 (図表910年計画への追加)

5.             国土安全保障

(出展: ITS AmericaHomeland Security and ITS」より作成)

以上、長々と米国におけるITS推進計画について見てきたが、概括すると、米国ではTEA-21体系下で、それまでのビジョン策定やシステム・アーキテクチャの構築から、より実配備に重点が置かれるようになってきており、こうした中で、多様な関係者間の役割分担と連携が重要な課題になっている。

また、テロ事件を受けて、運輸システムのセキュリティ確保が一層重視されるようになっている一方で、エネルギー/環境という視点は日欧に比べ希薄であると言うことができよう。

3.               ニューヨークにおけるITS

政府の計画を見てもITSの具体的な進捗状況はわかりづらいので、次に、実際にニューヨークにおいてITSがどの程度実用化されているのかについて見てみよう。

(1)         ニューヨーク州におけるITSの概要

連邦運輸省(DOT)のウェブサイト(http://www.its.dot.gov/staterpt/state.htm)には、州毎のITSの推進状況が掲載されている。ここから、200111月時点でのニューヨーク州におけるITSの推進状況について図表11にまとめておく。

 



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