2003年3月  JEITAニューヨーク駐在・・・荒田 良平

「米国のIT関連R&D政策の動向」


図表8 年度別の予算認可(authorization)額

(単位: 百万ドル)

プログラム

FY2003

FY2004

FY2005

FY2006

FY2007

合計

NSF研究

           

@研究グラント

35

40

46

52

60

233

A研究センター

12

24

36

36

36

144

NSFプログラム

           

B能力開発グラント

15

20

20

20

20

95

C1992年科学・先端技術法

1

1.25

1.25

1.25

1.25

6

D大学院実習

10

20

20

20

20

90

E教官養成実習プログラム

5

5

5

5

5

25

研究・教育の促進

           

FNIST研究プログラム

25

40

55

70

85

275

Gセキュリティ見直し、公開会合、情報

1.06

1.09

     

2.15

H内部研究

6

6.2

6.4

6.6

6.8

32

I全米科学アカデミー(NAS)研究

0.7

       

0.7

合計

110.76

157.54

189.65

210.85

234.05

902.85

(出展: 上院科学委員会ホームページから作成)

9 年度別の予算認可(authorization)額

(出展: 下院科学委員会ホームページから作成)

以上のように、「サイバー・セキュリティ研究開発法」の成立によって、米国はサイバー・セキュリティに関する連邦政府支出を現状の約6,000万ドルから2003年度に一挙に倍増させ、さらに5年間でその倍増を予定していることになる。

このように巨額の予算を伴う同法については、「pork barrel」(特定の利害関係者への利益誘導のための法律)だとの批判もあったようである。

しかし、優れて「人材問題」の意味合いが強く、一方で民間部門に任せていても十分な「投資」が期待できないサイバー・セキュリティ対策に関しては、連邦政府が「研究開発」「人材育成」の名の下に巨額の資金を投入することが、確かに唯一の有効な対策なのであろう。

5.             2004年度予算要求の概要

去る23日に発表されたブッシュ大統領の2004年度予算教書によると、米国連邦政府の2004年度のNITRD予算要求額は、対前年比6%増の217,900万ドルである。(図表10

ただし、この時点では上述のように2003年度の予算が承認されておらず、その承認の過程で非国防国内予算が一律削減されるという微調整が行われている。そこで、ここでは、220日の2003年度予算承認も踏まえて米国科学振興協会(AAAS)がとりまとめた数字を掲げておく。

図表10 Networking & IT R&D20022004年度)

(単位: 百万ドル)

省 庁

FY2002実績

FY2003見込

FY2004要求

2003-2004増減額

2003-2004増減%

NSF

662

678

724

46

6.8%

Defense

439

442

461

19

4.3%

HHS

347

374

441

67

17.9%

Energy

306

310

317

7

2.3%

NASA

181

213

195

18

8.5%

Commerce

36

38

39

1

2.6%

EPA

2

2

2

0

0.0%

合計

1,973

2,057

2,179

122

5.9%

(出展: 米国科学振興協会(AAAS)資料から作成)

この大統領予算教書や、大統領府の科学技術政策局(OSTP)がそのホームページ(http://www.ostp.gov/)で公表している2004年度予算関連資料によると、NITRD2004年度において、

  • ネットワークの“信頼”(セキュリティ、信頼性、プライバシー)
  • 高信頼性ソフトウェア及びシステム
  • 小型・組み込み型センサー技術
  • 高性能コンピューティング・プラットフォームのコスト、サイズ、消費電力の低減のための革新的アーキテクチャ
  • ITの社会的・経済的インパクト

などに重点を置くことになっている。

また、NITRD予算増に貢献しているHHSの予算増は、バイオインフォマティックスR&Dの重要性の増大を反映しているという。

なお、大統領予算教書等によると、ハイエンド・コンピューティング(つまりスーパーコンピュータ)の重要性の高まりを踏まえ、連邦政府の関係省庁は2003年にNSTC(国家科学技術会議)の取りまとめの下に、コア技術に関するロードマップの策定、連邦政府の有する計算能力及び利用可能性の改善計画、及び関係省庁によるシステムの調達に関する議論を行う予定だとされている。(詳細は決まっていないようであるが。)

参考までに、2004年度のR&D予算要求全体を見てみると、AAASによると、R&D予算要求全体では対前年度比4.4%増の1,2225,900万ドルが計上されている。(図表11

4.4%の増加といえば、それなりに伸びているように見えるのであるが、実はその内訳を見ると、国防関連R&Dが対前年度比7.2%増であるのに対し、非国防関連R&Dは同1.2%増であり、やはり国防偏重の予算要求になっていることがわかる。

こうした中で、NITRD予算要求の対前年度比5.9%の伸びというのは、実はかなり配慮されたものであると言えるであろう。科学技術政策局(OSTP)はその予算関連資料において、2004年度R&D予算要求の重点分野として、@NITRD、Aナノテク、Bテロ対策科学技術、の3分野を挙げている。

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