2. 電子政府イニシアティブの概要
さて、上記のような経緯を経て24の電子政府イニシアティブ(図表6参照)が選定されたわけであるが、その具体的な内容や進捗状況などは、つい先日2003年4月17日にOMBによって公表された新しい「電子政府戦略(E-Government
Strategy)」や、OMBの電子政府関連ウェブサイト(http://www.whitehouse.gov/omb/egov/)に掲載されている。
ここでは、各イニシアティブの概要とURL、そして2003年4月「電子政府戦略」に記載されている主要実績について掲げておくにとどめさせていただく。ただし、各イニシアティブとも「単なるウェブの活用」にとどまらず組織間の壁を越えて業務プロセスを合理化する内容を含んでおり、またRecruitment
One-Stopやe-Travelのようにアウトソース化するものもあって非常に興味深いので、各イニシアティブの詳細について上記ウェブサイトなどを直接御覧いただくことをお勧めする。
図表6 電子政府イニシアティブの名称と管理パートナー
対国民(G2C)
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対企業(G2B)
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@ GovBenefits.gov
A Recreation One-Stop
B IRS Free Filing
C Online Access for Loans
D USA Services
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労働省
内務省
財務省
教育省
一般調達局
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@
e-Rulemaking
A Expanding Electronic Tax Products for Businesses
B Federal Asset Sales
C International Trade Process Streamlining
D One-Stop Business Compliance
E Consolidated Health Informatics |
環境庁
財務省
一般調達局
商務省
中小企業局
保健福祉省 |
政府機関間(G2G)
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内部プロセス(IEE)
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@
Geospatial One-Stop
A Disaster Management
B SAFECOM
C e-Vital
D e-Grants |
内務省
国土安全保障省
国土安全保障省
社会保障局
保健福祉省 |
@
e-Training
A Recruitment One-Stop
B Enterprise HR Integration
C e-Clearance
D e-Payroll
E e-Travel
F Integrated Acquisition Environment
G e-Records Management |
人事管理局
人事管理局
人事管理局
人事管理局
人事管理局
一般調達局
一般調達局
国立公文書館 |
横断型(Crosscutting)
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@ e-Authentication 一般調達局 |
(注)IEEのBとCは当初は1つのイニシアティブであったが現在は別個に管理されている。
(出展: 2003年4月「電子政府戦略」等から作成)
(1) 対国民(G2C)
@ GovBenefits.gov(www.govbenefits.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、国民が自分がどのような行政給付(失業保険、年金など)を受ける資格を持つのかを知り、それにアクセスできるようにする。
- 実績: 400以上、年額にして2兆ドル以上にのぼる政府プログラムのワンストップ・アクセスを実現。毎月50万人以上のアクセスがあり、USA
Today紙で「人気サイト」の一つにあげられた。
A Recreation One-Stop(www.recreation.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、連邦・州・地方政府の公園、博物館、史跡などのレクリエーション施設に関する営業時間、料金、サービスなどの情報を提供するとともに、予約、入場券の申し込みなどができるようにする。
- 実績: Recreation.govは、国立公園や公共レクリエーション地域へのワンストップでのオンライン・アクセスを提供。2,500以上の公共レクリエーション施設にリンク。
B IRS Free Filing(www.irs.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、民間事業者が行う無料のオンライン税務申告サービスへのアクセスを提供する。
- 実績: 7,800万人以上が無料でオンライン税務申告することが可能。2003年の税務申告期には350万人の利用が見込まれる。
C Online Access for Loans
- 概要: ポータルサイトを通じて国民が政府系の融資プログラムにアクセスできるようにし、併せて融資プログラムのバックオフィス機能の効率改善と負担軽減を果たす。
D USA Services
- 概要: 民間の先進事例を導入し、行政サービスに関する問い合わせへの時宜を得た一貫性のある対応ができる、政府全体をカバーする国民対応サービスを開発し導入する。
(2) 対企業(G2B)
@ e-Rulemaking(www.regulations.gov)
- 概要: 国民が政府の全ての規則を検索できるようにするとともに、提案中の規則に容易にコメントできるようにし、併せて政府機関の内部プロセスを合理化・効率化する。
- 実績: 規則制定プロセスを支援する単一のシステムを構築することにより9,400万ドルが節約できる見込み。2003年1月23日の立ち上げ以来、サイトのヒット数は約260万。
A Expanding Electronic Tax Products for Businesses
- 概要: 事業者が必要な税務申告用の各種様式の数の削減、時宜を得た正確な税金情報の提供、電子的税務申告の拡大、及び連邦・州の税法の簡易化を行う。
B Federal Asset Sales(www.firstgov.gov)
- 概要: 連邦政府の資産(物品・サービス)の検索・売買をワンストップで行えるポータルサイトFedAssetSales.govを構築する。
C International Trade Process Streamlining(www.export.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて中小企業が輸出を行う際に必要な情報や書類を提供するとともに、海外の貿易相手の紹介・調査、輸出金融・保険、市場調査などが提供できるようにする。
D One-Stop Business Compliance(www.businesslaw.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、中小企業に係わる連邦・州・地方政府の法規制情報の提供に加え、実用的な法規制への対応方法を教示する。オンラインでライセンスや認可の取得も可能となる。
- 実績: BusinessLaw.govを利用して体系だったわかりやすい情報が検索できることによって、産業界は少なくとも年間5,600万ドルが節約できる見込み。
E Consolidated Health Informatics
- 概要: 政府機関と民間医療保険ベンダーとの間で医療記録情報を共有、再利用するため、簡易化・統一化されたシステムを構築する。
(3) 政府機関間(G2G)
@ Geospatial One-Stop
- 概要: ポータルサイトを通じて、連邦政府が所有する地理情報へのアクセスを提供する。連邦・州・地方政府で情報を共有する。
A Disaster Management(www.disasterhelp.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて、災害への準備、対応、復旧に関する情報を国民に提供する。また、連邦・州・地方政府の危機管理者に災害関連情報とともに企画・対応ツールを提供する。
B SAFECOM
- 概要: 全米の公安問題に携わる政府職員が、非常時に所管に関わりなく通信を行い業務を遂行できるような標準を確立する。
C e-Vital
- 概要: 連邦・州政府間で、出生・死亡記録を収集、処理、分析、検証、共有するための共通の電子的プロセスを確立する。
D e-Grants(www.grants.gov)
- 概要: 連邦政府助成金の申請・付与に関するポータルサイトを作成することにより、連邦政府全体における助成金管理を合理化する。
(4) 内部プロセス(IEE)
@ e-Training(www.golearn.gov)
- 概要: ポータルサイトを通じて全政府職員に研修や戦略的人材開発ソリューションを提供し、指導員費用や旅費を削減しつつ人材管理を改善。
- 実績: GoLearn.govは、2,000以上のe研修コース、電子書籍及びキャリア開発リソースに関する情報を求め6,000万以上のヒットがある、世界で最も来訪者の多いe研修サイトである。GoLearn.govには4万5,000人以上の利用者が登録されており、利用者は従来受けられなかった研修を1コースあたり小銭程度の格安で受けることができる。従来の研修方法では、これに比べるとごくわずかな人数の研修しかできず、費用は時として1クラスあたり2,500〜5,000ドルもかかる。
A Recruitment One-Stop(www.usajobs.opm.gov)
- 概要: 現行の連邦政府採用情報システムUSAJOBSをアウトソース化し、オンラインで採用情報の検索、採用募集、電子履歴書の提出、履歴書データベースの検索、応募者による適格性や審査状況の確認などができる最新のオンライン採用サービスを構築。
B Enterprise HR Integration
- 概要: 政府職員の人事記録に関する標準化を行い中央レポジトリ(保管場所)を構築して、人事記録のペーパーレス化や政府機関・部署間での電子的移転を可能とし、また政府全体での労働力分析・予測・報告を改善合理化する。
C e-Clearance
- 概要: 秘密情報を扱う政府職員のセキュリティ審査手続きのオンライン化、政府機関間をまたぐセキュリティ審査記録へのアクセス、セキュリティ審査記録の電子画像化を通じて、現行のセキュリティ審査手続きを改善合理化する。
- 実績: セキュリティ審査の未処理案件を減らすことのできる統合データベースを導入済み。現在、全審査の99%が電子化済み。
D e-Payroll
- 概要: 連邦政府機関の22の給与支払いシステムを統合し、給与規則や支払い手続きを標準化・簡素化することによって、給与支払いに要するコストを削減する。また、成果と予算との関連付けや施策プログラムの財務管理の改善にも資する。
- 実績: 給与支払い処理センターを22から2つ(国防省/調達庁と農務省/内務省)に統合中であり、今後10年間で12億ドルが節約できる。
E e-Travel
- 概要: 各連邦政府機関の出張手続きシステムを統合し、費用を最小化しつつ利用者の満足度を高めるため、民間での出張管理事例を取り入れた政府全体のウェブベースでのサービスを、民間事業者に委託して提供する。出張の企画、承認、予約、支払い、払い戻し、予算確認、報告書の作成・決裁などができるようになる。
F Integrated Acquisition Environment(www.bpn.gov他)
- 概要: 供給業者の能力や過去の実績等の情報の維持など、調達における共通的機能を共有することによって、現行の調達環境における非効率性を取り除き、各政府機関における製品やサービスの調達の費用対効果を高める。
- 実績: 受注契約者の過去の実績情報を提供する実績情報検索システム(www.PPIRS.gov)、機密を要する調達資料の安全な転送・配布ができる連邦技術データシステム(www.FedTeDS.gov)などの主要なウェブサイトやツールを最近立ち上げた。
G e-Records Management
(http://www.archives.gov/records_management/initiatives/erm_overview.html)
- 概要: 各政府機関における電子記録管理の改善のための指針を設定する。省庁横断的な意思決定や通信文書のやりとりのためのモデルの提供、各政府機関における電子記録管理システムの導入の支援、記録管理アプリケーションに求められる基本機能の検討、国立公文書館に電子記録を移転し永久保存するためのツールの提供が含まれる。
(5) 横断型(Crosscutting)
@ e-Authentication(www.cio.gov/eauthentication/)
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概要: 連邦政府のウェブサイトの認証作業を「FirstGov.gov」にゲートウェイを設けて一元的に管理することで、民間事業者、国民及び政府の負担を軽減する。
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