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99年6月 JEIDA駐在員・・・長谷川英一
米国におけるオンライン・プライバシー問題への取組み -4- |
上述の法案はいくつかのカテゴリーに分けられるが、以下の3つがプライオリティとなっていると見られる。 第1に医療情報関連であるが、96年に「Health Insurance Portability and Accountability Act」が成立した際に議会は2年以内(99年8月21日まで)に、総合的な医療情報のプライバシー保護法制を策定するとし、もしできなかった場合は厚生省が半年以内(2000年2月21日まで)に規制を策定すると決議している。また大統領も年頭教書でそれをリマインドしている。現在出されている上記の3法案はいずれも医療関連業界やプライバシー擁護団体からの要請を受けて、ほぼ類似の形態にまとまっており、4月27日に開催された上院健康・教育委員会でもジェフォーズ議長は、これらの法案から良い条項を取り出して早急にまとめていくとしている。特にS.578は議長自らがbipartisanの法案として出しただけに、力が入るものと見られる。
1 金融機関が貸付審査のために個人の医療記録を勝手に見るようなことがないよう、医療記録のプライバシー保護を確立する。議会が8月までにできない場合は、政府が代わって行う権限を議会から与えられている。 2 消費者がクレジット・カード会社からの請求にミニマム・ペイメントしかしなかった場合、どのくらいの期間にどのくらいのコストがリペイメントのためかかるのか、クレジット・カード会社に明確に通知をさせる。 3 他人の名義などを盗んで、銀行から金を借りたり、クレジット・カードを使ったりする犯罪を減らすため、昨年10月、「Identity Theft and Assumption Deterrence Act of 1998(Pub.L.105-318)」が成立しているが、さらに取締りを強化すべく、財務省及び司法省の優先事項とする。財務省はidentity theftに関する全米サミット開催も予定している。インターネット上の詐欺行為はこの半年で3倍も増加しているが、この取締りを強化すべく、司法省がインターネット詐欺行為追跡センターを設置するとともに、州の司法当局などの訓練も行う。また、SEC(証券取引委員会)にも取締り強化のための予算措置を行う。 4 社会保障を受けているような経済弱者が金融サービスを受けられるよう、財務省が低い手数料の銀行口座を民間銀行を通じて開くことを可能にする。また、「Community Reinvestment Act」は20年の歴史を持つ法律であるが、その下での貸付のほとんどがここ6年に行われており、この努力を継続していく。 5 国民の金融リテラシーを高めるため、国家経済評議会が教育省などと協力して、高校教育などで金融知識を教えるなどの計画を策定する。 第3に包括的なオンライン・プライバシー関連であるが、民間の自主規制努力がうまく行かないことを見越してか、既にいくつかの法案が出されている。しかし、S.809バーンズ−ワイデン法案は、子供に対するものとほぼ同様の責務をインターネット関連業界に課すものであることから、あまりに対象が広くコストもかかると業界からの批判が強い。後述するように5月には民間自主規制が軌道に乗りつつある(?)との調査報告なども出ていることから、ここまでやってもなお包括的なものが必要であるとの議論に本当に戻っていけるかは難しいところであろう。 |
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